つくらないで、つくる。売らないで、売る。
「つくらなくても、つくることができる」
私の心に深く残る、建築家 / 起業家の谷尻誠さんの言葉。
今、つくり手は喜んでつくり出す前に、本当につくる方がよいのか?を考える必要があるほど、モノが溢れている。それでもつくる、ということを仕事にする。
今回は「つくらないで、つくる。売らないで、売る」ことについて、ストーリーを軸に考えてみた心のメモ。
THINK "考える"を考える
谷尻さんは、「THINK」という名のゲストを招いたトークショーを毎月行っている。なぜ建築家がトークショーを主催するのか。
WEBサイトには、空間は、歌を歌えばライブハウス、食事をすればレストラン、作品を展示すればギャラリーになる。行為から空間を眺めると、最低限の何かがその部屋の名前をつけていることを知ることができる、とある。
建築家ならではのアプローチだし谷尻さんの思考はいつも本当におもしろい!
THINKについて語る谷尻さんの言葉を、私は日記に残していた。
「建築家は建築をつくることが仕事だが、つくらなくても空間をつくることはできる。そのことを認識し、いざ建築をつくるときに、本当に必要なものが何なのかを理解しておきたいからやっている」
「大切」ではなく、「必要」という言葉がピタリとくる。人は、気持ち次第で何でも大切にできてしまうが、本当に必要なものは、きっとたくさんは残らない。
トーク会場に必要なものは椅子だそう。極論、人さえいれば成立する。つまり、谷尻さんには「ただの箱の設計」が人が話す場をつくる選択肢のひとつになる。
私は思わず考えさせられる。
何をつくり、何を売る、のか?
建物をつくらなくても、空間をつくることはできる。
アクセサリーをつくらず、何をつくることができるだろう?
この問いのおもしろさは「つくるため」に「つくらない」を考えるところにある。考えるきっかけとして、自分が専門としている領域から視野を広げて俯瞰してみると可能性が見えてきやすい。
そうして私が、アクセサリーを装うことから考えてみたのが、装いを楽しむ「試し場」プロジェクト。このつくらないプロジェクトは、つくるときに本当に必要なことを知ろうとする行為だったんだと腑に落ちた。
さらに「売らないで、売る」にも通じていると気がついた。
アクセサリーをつくらなくても、
装いを楽しむストーリーはつくることはできる。
アクセサリーを売らなくても、
装いを楽しむストーリーを買っていただくことはできる。
アクセサリーはアウトプットのひとつの形にすぎない。
プレゼンの日はしっかりした印象にしたい、友達とごはんに行くからかわいくしたい、些細だけど1日を左右してしまうような行為がストーリーと結びつくことで、アクセサリーは気持ちを支えてくれる存在になると私は信じている。
ストーリーのスタートをきるには
「モノよりストーリー」が多くの共感を集めて久しいが、私は誰かのストーリーを探しにいくだけではもう足りないのではないかと感じている。
つくる過程にストーリーがないと、伝えることはないでしょうか。
素敵なエピソードがないと、ストーリーとは言えないのでしょうか。
重要なのは、誰かの話を求めるのではなく、自分がストーリーを紡ぐこと。
モノが生まれる前から、モノに出会ったときから、モノと時間をともにしながら、世界にひとつだけのストーリーになる瞬間は、どこにあってもいいはず。
私がおすすめする、自分のストーリーを簡単に紡ぐ方法は、何事にも感想をもつこと。そうすると伝えることもできるし、誰かの感想に共感することもできる。
個人が抱くストーリーがつながると、思いもよらない未来につながる。
つくらないでつくる、とはそういうことなんじゃないのかなぁ。
そうやって参加型のストーリーでものづくりをしていきたい。
最近私が感じる、社会からのメッセージ。
「あなたの話を待っている」
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▼装いを楽しむ「試し場」プロジェクト・きっかけ
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