#48 縄文式土器にドキドキする
「ドキッとするほどいいのが縄文式土器、それよりやや良い弥生式…」。これは学生時代の夏休みにアルバイトに行った陶芸教室の先生が体験コースの方に紐づくりの説明をするときの決め台詞です。実にキャッチ―です。
何を言いたいかと言うと、今回は縄文式土器でドキドキしてきたという話です。
今年オープンした豊田市博物館。一度見に行きたいと思いつつ、結構混んでいるという噂を聞いて先送りしていました(先送りは得意です)。
豊田市博物館の開館記念の企画展が「旅するジョウモンさんー5千年前の落とし物ー」なんです(12月8日まで)。縄文式土器を中心に縄文時代の人の暮らしを見ていくという展示です。これでもかというほどの縄文式土器が展示されていました。
企画展の展示室の入ってすぐに国宝がどーーんですよ!!縄文式と聞いてすぐに頭に浮かぶ火焔型のあの土器が!!です。他にも重要文化財クラスも多数展示されています。
私自身は縄文式土器は他の展示では以前に見たことはありました。しかし、こうたくさんの縄文式土器に囲まれるのは、もうドキドキです(本当にそんな感じでした)。
もし、「実物は見たことないけど教科書でなら見たことはあるよ」という人はぜひ実物を見てください。立体感がすごいです。細かいんです、装飾がとにかく。装飾の裏側や写真の資料ではなかなか見えてこない細部に込められているエネルギーががすごいです。伝わってきます。本物が目の前にあるという感動。贅沢な瞬間です。
岡本太郎さんが初めて火焔型土器を見た時「なんだこれは!」と叫んだと聞きますが、そのひと言(感想)は誰もが一緒じゃないでしょうか。
5000年も前にこんなものを作られたら、今、これから私たちは何を作っていけばいいんでしょう?これは時代を超えたアートです。
たくさんの縄文式土器を見ていると不思議なことに気付きます。それぞれ発掘された地方ごとに特徴はあるものの、立体的な装飾や渦巻き状の文様など共通する部分が多く見られます。日本各地で、さらに縄文時代という幅の広い時代に、どうしてこのような他に類を見ないような土器が各地でたくさん作られたのでしょうか?
この時代を代表する一人の縄文アーティストが多くの作品を残したというのも考えにくいし、そういった縄文デザイナーが産んだ流行のスタイルが全国の縄文部落に広がったというのもどうも……と考えるととても不思議じゃないですか。このとんでもなく個性的なデザイン装飾が全国にですよ。
縄文人の共通するDNAに中にこうした「感覚」があったんじゃないかと思えてきます。展示の最後に最新のミトコンドリアDNAの分析によると現代人にも10%ほど縄文人から受け継いだ遺伝子的な要素があると書かれていました。現代日本人の中にも火焔型土器を作り得る要素があるかもと思うとこれまたドキドキしませんか?
とにかくこれだけ多くの縄文式土器を一度に見るという機会はなかなかないと思いますので、ぜひ(会期は残り少なくなっていますが)見に行ってください。
タイトルからもわかると思いますが、ジョウモンさんと旅をしながら、ジョウモンさんの生活や価値観などをたどる展示になっています。子ども(小学生くらい)にも楽しくわかりやすい展示になっています。子連れで見る価値大です(こういう展示に子どもの頃触れていたらもっと違った価値観も育っていたかも……と自分に問いかけました)。もちろん大人も十分楽しめます。
陶器に関わるものとしては、どう見てもしっかりとした高温で焼かれたわけもないこの中途半端な焼き締めの陶器(ちょっと言い方は悪いけどね)が数千年もの時代を無事(壊れることなく)地中で眠っていたという奇跡にも驚きます。
陶芸教室の先生の言葉、本当でした。いや、縄文式土器はドキッとするくらいじゃなくて、もうドッキドキですよ!