あなたがいないと
初めて買ったCDを、よく覚えていない。
というのも何枚か一緒にまとめてだった気もするし、少なくともこれが最初に自分のお小遣いで手に入れたんだ、という実感の一枚というのがわからないのだ。
*ディズニー映画のオムニバスサントラ
*「天空の城ラピュタ」のサントラ
*ジョンウィリアムス作品集
このどれかなのは確実だ。
以前も書いたけれど、私の最初のアイドルは映画音楽の巨匠である
ジョン・ウィリアムズだった。
子供の頃から映画が好きだった。
映画が面白いのには、脚本、というものがあるのだと知ってさらに惹かれ、いつ頃からかそれを目指すようになった。
だけど、それよりももっと根底に、気付かないうちに私を映画の世界に引き込み染み渡っていたのはサントラ=音楽なのだと思っている。
「音楽が好き」と言うのは抵抗がある。
なにか生きています、いうような当たり前のことをあえて宣言しているような気がして口にするのを極力避けてしまう。音楽が好きじゃない人なんているのだろうかと思ったりする。
音楽がすごいのは、存在自体の形を変えられることだ。
なにせ見えたり見えなくなったりするのだから。
いつも見えないことの方が多い。でも目の前で演奏を見れば、音楽は目に見えて伝わってくる。
映画の中の音楽はさらに不思議だ。
スクリーンの中に音楽自体の姿は見えない。
だけど目に見えずそのシーンに馴染んでいるのに、とある瞬間、ふっと映像の中に浮かび上がって見えてくるときもある。あえてミュージカルなどと言わなくてもそうだ。
それはなんなのだろうと思った時に、作り手の音楽への愛情なのではと思ったりする。
映画にとって音楽は大切な要素。というのはみんなあるだろう。でもそれ以上に、音楽がなくては生きていけない、というような深い愛情のある作品に触れると、それがみている方にも伝わってくる。
ここ最近で、個人的にそれを強く感じた作品
はじまりのうた
ベイビードライバー
スウィング・キッズ
どれももちろん素晴らしいストーリーやキャラクターにどんどんひきこまれていくのだけれど、主役は音楽そのものだ。
音楽があって初めて成り立つ映画。
「スウィング・キッズ」については、(以前私が書いたこの映画の記事も取り上げてくださっているが)相馬光さんが記事の中で音楽との関係性について語ってくれていて、これを読むだけでまたあの世界に引き戻されて涙が出そうになる。
相馬さんの記事は、これ以外でもいつも音楽への深くて強い愛情を感じると同時に、生活という物語の中に常にサントラを流しているのではと思う。
この映画はまさにタップダンスと見える形にした音楽に、
見えない、見せてはいけない情熱、怒り、そして希望を乗せた映画だ。
音楽があるから生きていけた若者、音楽と一緒に生きていく若者、
音楽に魅せられその中で生きていこうとする若者・・・
あなたがいないと。