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美しいものは、すぐそばに。
東北芸術工科大学 美術科 総合美術コース 後期1学年の演習にて、デザインレーベル setoでもたびたび行ってきたプログラム「ナラベルアート」を実施しました。普段の生活の中で、夫婦で考え、娘たちに学んだことが、教育の場で応用できること、これはとても有難いことだと思っています。
「ナラベルアート」は、こどもも、大人も、誰でも楽しめるプログラムです。身近なものを、ただ「ならべる」。これは、一見ばからしいことにも思えますが、実は大変奥深い作業です。
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学生たちはまず、自然の中の花などを観察しました。そして、ありふれた人工物を再度観察し、自然の配列に倣って、さらに自分の感性を働かせてならべていきます。
製作はきわめて簡単。「中心から規則的に広がるようにならべる」だけです。
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最初は何コレ?と作業を戸惑っていた学生も、一週間後には、ハッとするような配列を生み出していました。
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観察→試行→気づき→発展→比較→気づき→完成→気づき→応用→また観察。
この無限のクリエイティブ・ループを通して、多角的な視点と創造力を育むことができます。これは「デザイン」のフローとも似ていますね。
このプログラムはこれまでにも、未就学、初等教育分野でも行ってきましたが、大学生である彼らは、さらに撮影レタッチやレイアウトまでを行い、ヴィジュアルデザインとしてポスターや動画などの「ナラベルアート」を完成させました。ただ「美」を発見するだけでなく、それをコミュニケーションツールとしてデザインする。アートからデザインまで、短い時間ですが一気に旅をすることができます。
東北芸術工科大学 総合美術コース 1学年 (インスタグラム)
「ナラベルアート」ウォールアート
(やまがたクリエイティブシティセンターQ1)
山形大学医学部付属病院 Yume ギャラリー
(ホスピタルアート)
のりも、はさみも、テープも何も使いません(固定用に練り消しなどは使用する場合もあり)。ただただ、同じ形のものをならべていくだけです。そして数週間の演習を終えた後、使われたたくさんの道具や部品たちは、静かに元にあった場所へと片付けられていきます。まるで何事もなかったように。
学生たちは、自分たちが行ってきた作業が、じつは、花が咲き、葉や実が栄え、枯れていく、野の「自然」の営みにも似ているのだなと、最後に気づいてくれました。美しいものは、常に私たちのすぐそばに存在しています。
近年「探究学習」が話題に登ることも多くなりましたが、問題を提示する力は、まず身の回りを多角的に観察することから生まれると考えています。また、小さな子から大学生まで、創造の力を身につける時期に、早い遅いは無い、いつでも誰でも、取り組むことができるもののだと感じました。
みなさんもぜひ、「ナラベルアート」してみてくださいね。