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どうせまた明日になれば思い出すだろうから、今日も思い出す

どうせ、また明日になってしまえば嫌でも思い出すだろうから、今日も思い出そうと思う。

その日は小雨だった。ちょっと寒くて気分が乗らないジメジメとした日。

待ち合わせは中目黒駅前のオシャレにだけ特化した本屋だった。

自称170センチの僕より遥かに小さい女性が傘を指して待っていた。

その人はどう見ても年上だった。
僕の一番上の姉が今年で42歳だから、きっとそれ以上だと思う。

マッチングアプリを開いてみる。今日会う予定の人は29歳。のはずだ。

何かもかもが疑問だらけだが、無視するわけにもいかず、僕はそのおばさんに声をかけた。

「娘の……」
「は?」

とモゴモゴと話すおばさんは泣いていた。仕方なくスタバに案内すると、意識不明になった娘が会おうとしていた相手に会ってみたかったと涙ながらに話した。

僕はいろいろと気持ち悪いなと思ったが、アプリで会うはずだったその子の親と対峙する覚悟を決めた。

それから5分後。おばさんは電話に出た。
娘の死を知らせる連絡だった。

おばさんは僕の手を握ってきた。
それは気が動転して取った行動には見えなかった。
本気の恋愛をしようとしている。そんな感じだった。

怖い。
僕が熟女好きだとどうして分かったのか。



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