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転がる石の無条件幸福

今日のデートもまたダメだったと思う。

アプリで出会ったあの人も、この人も、感想はいつもこんな感じで終わる。
そりゃそうだ。 

男性経験のない、一人っ子の私は大人になっても異性としゃべることが苦手だ。嫌いだ。不可能なのだ。

グッと喉が閉まるように甲高い声が押し返されて潰れていく。乳牛ならミルクが出るくらい。

場面緘黙症というらしい。

だからいま、隣にいる男性としゃべっているのは奇跡だと思う。
古びたバー。
泥酔した私が肩を寄せるこの人、誰だっけ。

そうだ。昔私を補導した警察官だ。

まどろむ中で、この後起こる夢のような時間と悲劇が一瞬脳内に浮かび上がった。

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