見出し画像

『知らない人んち』(仮) 第2話


#テレ東シナリオコンテスト


配役
YouTuber  きいろ      筧 美和子
アク  シェアハウス住人 戸塚純貴
キャン シェアハウス住人 秋山ゆずき
ジェミ シェアハウス住人 長井 短
アオ(左 青太朗) 園長   濱津隆之

□「知らない人ンチ(仮)」 2話

○ 和室

  きいろ、部屋に入るとそこにはジェミ。
きいろ「じ、ジェミさん。あ。聞きました。アクさんのことでいろいろ大変だって。私、変な勘違いしてて」
   ジェミ、黙ったまま絵の裏を見せつけて
きいろ「え!? わ、わたしの名前?」
ジェミ「(微笑み)やっぱり覚えてないわよね。20年近く前のことだものね」
きいろ「なんでわたしの絵がこの家に? え、全然分かんない」
ジェミ「じゃ、あたしのことも覚えてないか……」
きいろ「え? わたしがジェミさんと知り合い?」
   絵に描かれた5名のうち、2人を指さして
ジェミ「あたしが年長のとき、きいろは年少。いっつも『お姉~ちゃん』って付いてきてたじゃない」
きいろ「(ハッとして)あいチャン!? かつのあいチャンなの? わぁ~!」
   きいろ、ジェミの手をつないで喜ぶ。
きいろ「こんな偶然ってないよ! ううん、これは運命の再会!!」
   きいろ、カメラを回して
きいろ「(手を振り)なんとここの住人さん、幼稚園のときのお友達でした~!!」

○ アクの部屋

  その様子を見ているアク。
アク「これで……全員か」

○ 和室

   ジェミ、手を振りはらう。
ジェミ「運命って、あらかじめ決められた――悲劇なのよ」
きいろ「どういうこと? かつのあいちゃん?」
ジェミ「そんな90年代ミリオンヒットみたいな名前、捨てたの」
   キャンもそこに駆けつけ
キャン「あちゃ~! 言っちゃったかぁ、しかもここで」
きいろ「キャンちゃんさん!」
   キャン、絵の一人を指さして
キャン「ちなみにこれが私!」
きいろ「え、キャンちゃんさんも……あの幼稚園の?」
キャン「今と全然ちがって地味だったから」
きいろ「(気づき)あ、ろまんチャン。酒場野ろまんチャンでしょ。すっごい無口で真っ赤な顔の――」
キャン「やめて! そんな70年代の演歌みたいな名前捨てたの!」
   絵がヒラヒラと舞い
きいろ「じゃ……私たちがここにいるのって……偶然?」

○ 夜道

   夜道を走るアオ。動悸が激しくなり、うずくまりーー。
アオ「うぅぅぅ(だんだんとゾンビのような声になっていき)」
   なんとか、立ち上がり
アオ「持病の腰痛と痛風が……。おれも年だな。でも急がないと――」

○ アクの部屋

  和室の様子を見ているアク。
アク「……あ。あとは園長先生、か!」

○ 和室

   ジェミ、去ろうとして
ジェミ「あとは説明しといて。行かないといけないところある」
きいろ「あいちゃん!」
ジェミ「(去り際)ジェミだし!」
キャン「ここじゃ……まずいから、行こ」
きいろ「……え」

○ トイレ

   トイレに閉じこもるきいろ、キャン。
キャン「こないだの説明。ウソがあったの。ごめん」
きいろ「え~。もうワケわかめラーメン!」
キャン「アクがおかしいのは間違ってないんだけど。あの子ね」
きいろ「あの子?」
キャン「あの子も同じ幼稚園に通ってた日色正義(ひいろせいぎ)君なの。覚えてない?」
きいろ「……なんでだろ。幼稚園のころの全然記憶なくて。2人の名前だけは、ヘンだからたまたま記憶に」
キャン「もう! ……(マジメな顔で)正義くんね、いや、アクは……アクは心が幼稚園児のままなの」
きいろ「幼稚園児のまま? だからいろいろモノを拾ってきて」
キャン「そう。でもそれだけじゃなかったの! 幼稚園に通っていた……好きだった女の子をこの家に呼び込んで一緒に暮らそうとしてるの」
きいろ「何でそんなこと?」
キャン「あの子、幼稚園でひとりだけの男の子だったの。だからハーレムで……それを再現しようとしてるの。バチェーーいや、何でもない」
きいろ「だって! たまたま、撮影するために声をかけただけですよ?」
キャン「私たちだって一緒。もはや呪いというか運命というか、この家に住むことになって――こんなことに」
きいろ「そんなの、逃げだせばいいじゃないですか!!!」
キャン「(口をおさえ)し、静かに!」

○ アクの部屋

  人形遊びをしているアク。誰もいないリビングの様子がモニターに映っている。
キャンの声「この家中に監視カメラがあるの!」

○ トイレ
   トイレに閉じこもるきいろ、キャン。
キャン「(小声で)だから今はトイレで。それもそのうちバレそうだけど」
きいろ「ほ、他の元園児たちは?」

○ 暗室

   ミシミシとする暗室。

○ トイレ
   
キャン「たぶん。あの部屋にいるんだと思う」
   きいろ、「ニゲテ」と書かれたノートの切れ端を取り出して
きいろ「こ、これは? 布団に挟まってたの。他の子からのメッセージでしょ!?」
   キャン、トイレの水に紙をひたす。

すると、文字の一部が消えて「一バン」となる。

きいろ「イチバン?」
キャン「アクが“一番好きな子”に渡してるの。そして、その子も――」
きいろ「あの部屋に!?」

○ 暗室

   ミシミシとする暗室。
キャンの声「誰かが文字に上書きしたのよ」

○ トイレ
   
   きいろ、メモを握り
きいろ「何のために……そんなこと……」
   玄関から聞こえる物音。
   意を決して、飛び出すきいろ。

○ 玄関

アオの声「開けろ! 開けろ!」
   きいろ、カメラを起動し、慌てて扉を開ける。
キャン「ちょっと! 勝手に開けちゃ……」
アオ「! きいろにろまん……だよな。無事だったか」
キャン「園長先生!!」
きいろ「え……全然覚えてない」
アオ「ま、どこでもいそうな顔だし。(顔を振り)正義くんからこんなモノが届いて――」
   ノートの切れ端。「えんちょうせんせいも遊びにおいでよ」
きいろ「み、見せてください!」
   きいろ、カメラを回して
アオ「ば、バカ! カメラを止めろ!」
きいろ「いやです。わたし、ユーチューバーですから」
アオ「カメラを止めろ! 余計なことしたら――」
きいろ「絶対に――カメラは止めません!!」
   アオ、突き飛ばされて

きいろ「ご、ごめんなさい」
アオ「うぅぅぅ。持病の頭痛と肩こりが」
キャン「老けましたね、園長先生も」
アオ「そういう君たちこそ大人に――。正義君以外は」
きいろ「正義とアク……か」
アオ「とにかく、ここから逃げ出そう! さもないと」
アクの声「先生!」
   アク、笑顔で近づいてくる。
アク「来てくれたんだ。うれしい」
   アク、「一バン」と書かれたノートの切れ端を持っている。
   怯えるきいろ、キャン。かばうアオ。

○ 夜道
   
   ジェミ、急ぎ足で――。
                          (2話 おわり)


#テレ東シナリオコンテスト


いいなと思ったら応援しよう!