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こんな雨の中振られたくない

卒業してから初めて話した人が、あの子になるとは思わなかった。
高校時代、心を閉ざして生きてきた。無論友達もいなければ、話し相手の一人もできなかった。先生も僕には無関心だ。

いわば地獄にいるような3年間。よく毎日通ったなと思う。教室が隔離された白い部屋のように思えたこともあった。

でも、それは上京すればすべてが変わると終わっていたからで、日本アルプスを超えただけの関東平野が急に天国になるわけがなかった。

だからずっと家に引きこもっていた。
三か月が経ち、大学から親に連絡が行ったせいで、僕は外に出ることになる。
立川駅のロータリーは、僕が住む地元のどの駅よりも大きくて騒がしい。

家を出たその日のことだ。
英会話の勧誘の後に声をかけてきたのが、高校の同級生でアイドル志望だった川﨑奈づなだった。


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