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私は東大だから最強。

『天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず』
と福沢諭吉が書いているが、平等を訴えているわけではなかった――。

諭吉さんが言いたかったのは「不平等を埋めるために生まないために、勉強して自分を磨くこと」ことだった。
要は「頑張って勉強せぇ」という意味だ。東大生の私にはしっくり来る。
運動神経やルックスでは天の上に立てない私たちには学問があった。
それを教えてくれたのが、イケイケ大学生の象徴・慶應大学を作った福沢諭吉というのは皮肉だろう。

そんな私は「東大スポーツタイムズ」という新聞部に所属している。

スポーツ新聞社の一室を借りて大学のサークルが何組か集まって、スポーツ新聞を作っている。
簡単に言うと、東大の体育会、運動部の活躍を誌面に載せる。
それが私たちのサークル業務だ。

だが、いかんせん一面が決まらない。
四部へ降格したサッカー部。
メンバーが集まらなかったホッケー部。
いや、硬式野球部だろう。
注目度の高い東京六大学野球。これしかない。
しかし、トピックがない。

新記録の102連敗を、記事にするか。
0‐33でノーヒットノーランを食らった試合を、記事にするか。
高校生クイズ準優勝の二人がバッテリーを組んだホットトピックを、記事にするか。

いや、女子部員で同じゼミの早和子がホームランを打ったこと以外、一面にふさわしい記事はないだろう……。

でも、早和子はそれを嫌がっていた。

早和子は元々肉体的には男性だった。
だから女子部員がホームランを打ったという見出しは事実かと言えば間違いだし、そもそもホームラン1本ぐらいで、たいそう名誉のあることみたいに書かれたくないという。

でも早和子のパートナーとして、彼女を称えたかった。
パートナーとして彼女の努力を伝えかった。
早和子が好きだったから。

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