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Photo by
ohtsubo
謝罪しとけば
夜中に帰宅するのは気が引ける。
彼女が白けた顔で出迎えた。
嫌な予感がする。
半年前から3年目の茉里奈とよなよな会っていることを知ったに違いない。
いや。
そんなことは端から分かっていて我慢の砂時計がひっくり返ったのだと、かびかびのコロッケとキャベツを見て気づく。
「ごめんなさい」
彼女が小4の息子がいる既婚者との不倫を謝罪してきた。
もうすでに再婚の話も動いているらしい。
俺のことなんて何も知らなかった。興味を抱く余裕もなかったようだ。
そんな感じで離婚の話に流れ着いていった。
罪悪感と安堵が頭をぐるぐるする。
これでようやく茉里奈と自然に話せる。
「ごめんなさい」
茉里奈は別に好きな人ができたという。
最近、離婚したばかりの男で、そいつのもとで暮らしたいと涙ながらに語った。
その男は、元妻の不倫相手だった。
「ごめんなさい」
俺は口を開く。
「その人、俺の兄貴なんだ」