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誰かが、どこかで、きっと仲間はずれ

久しぶりの再会が久しぶりに思えないのは、お互いに何の成長もしていないからなのだろうと思う。
居酒屋で8年ぶりの再会を果たしたが、全く感情は揺さぶられなかった。

3人とも30代後半になっても平社員まっしぐらで、キラキラした者は一人もいない。

でも、変化もあった。一応。

大石は結婚し、子供が二人いる。
多江原も結婚し、子供ができたばかり。
俺はと言うと、いい歳をして仕事を辞めた。
要は無職で独身、貧乏暮らしだ。

冴えないこいつらも家族トークで自然とマウントを取る。
悪気がないが、悪いと思っていないところがポンコツたるゆえんだろう。

俺はと言うと、エージェントに登録しながらも、暇な日は派遣バイトを始めた。

そこに行くと、俺はまた仲間外れになる。
死んだような顔のおじさんたちが談笑している。大概がギャンブルか風俗の話だ。
どちらもやらない俺は一人黙ってスマホを見ている。

俺の居場所はどこに行ってしまったのだろう。

すると、目の前のパイプ椅子に座る30代にも40代にも、いや50代にも見える女性がいた。
彼女もまた一人だ。床を見つめている。

それが、小学校の同級生で初恋の人だった金山さんだと気づいたのは、休憩を終えて点呼を取っているときだった。

あのとき、好きじゃないごめんね、と言われた金山さんがブカブカの作業着を羽織って立っていた。

人生は人と人との絆や縁でできている。

そんな言葉は信じたことはなかったけれど、今ひとりぼっちの俺は、金山さんとのナニカを感じていた。

まさか金山さんが殺人犯と暮らしているなんて、殺人幇助をしたなんて、そのときは分からなかった。

そして俺が彼女を救うために立ち上がるとは……。

この続きはまた今度話そう。
さぁ午後の業務が始まる。

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