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おちこぼれ刑事の憂鬱な日常

「今回も解決ありがとうございます……」

思えば、あの探偵のせいで、俺の人生が狂い始めた。

一年くらい前から我々の管轄で難事件が多発。しかし、それをいとも簡単に解いてしまう高校生の自称・探偵が現れた。

我々の評価は一変した。事件解決は素晴らしいことだ、しかし刑事たちの体たらくは何事なのか。
何度も呼び出しを食らっては説教を受けた。俺もその例に漏れず頭を下げる日々。
頭の十円ハゲは次第に大きな円形脱毛になり、すっかり薄くなっていた。バスタブに溜まる髪の毛が、事件解決とともに警察の不甲斐なさを物語っていた。

あいつさえいなければ。あいつが解けなくてもいつか解けたし。なんでいつも現場にいるんだ……。

恥ずかしながら男泣きした夜もあった。

そんなある日。また殺人事件が起きた。ここ最近、管轄内では類を見ない頻度で事件が起きているが、そんなことは気にならなかった。大事なのは……。

あいつは、やはり偶然現場にいた。そしていつも通り我々よりも先に捜査を始めている。

勘弁してくれ。

心で閉まっていた言葉を探偵君に吐き出してしまった。

「そんなことして意味があるんですか? 俺の爺さんの血筋を背負って一つの真実を導き出そうとしてるだけです」

こいつには敵わないと思った。仕事を舐めていたと思った。
俺は刑事を辞めて、好きなことを見つめ直すことにした。

そうだ、俺。漫画家になりたかったんだ。



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