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その3 テレビゲームを持ってない僕。 〜32ビットのジュブナイル〜

1998年、秋。
僕はひとりになった。テレビゲームを持っていなかったからだ。

ポケモンブームが僕らを、いや僕以外を覆った。ポケモンが終わったらちょっと背伸びしてプレステを始めるクラスメイトたち。

次第に僕は、放課後誰にも遊びの誘いを受けなくなった。いや、僕自身が覆った。32ビットのゲームに興じる仲間とまるで言語を交わせないような、あの状態が苦痛だったから。

唯一の救いだった学童も、小学6年生にもなると同級生は激減し、低学年と行なうドッジボールはそれでそれで苦痛だった。

僕はひとりになった。
放課後だけ。
だから先生も、親も気付かない。
誰にも誰にも相談できない。

僕は、学童教室の下にある図書館を覗いてみた。仕方なくそこで時間を潰した。『ズッコケ三人組』や江戸川乱歩、人気のはやみねかおるも読んだだろうか。
プロ野球や高校野球の歴史をまとめた、子供向けカラーブックみたいなのも読んだ。
もちろん、大好きな日本地図も。

日本全国の子供の中で、テレビゲームを持ってないヤツはどれだけいるんだろうか。

世の中、テレビゲームは犯罪を助長させるなんていうヘイト運動が起きていたけど、何の後押しにもなってない。

本を読むのは大好きだった。時間が過ぎるのを忘れるくらい。
いや、本当は図書館が閉館する夕方5時を待ちわびていた。

「ただいま」
「今日餃子もいるけ? あんた、好きな揚げたヤツ」
「うん。ずっと外おったから。腹すいとる」
「……。チーズ入りやよ」

嘘ついた。
今日の放課後は図書館の机にいた。それから、「ジャンケン石堂」に寄って、一人で帰ってきたんだ。
でも、チーズ入りの揚げ餃子はうまかった。

帰り道、向こうのほうで弟と犬の散歩をするアラヤ君を見かけた。でも、話しかけなかった。

夜のプロ野球ニュース。これまで弱小だった横浜ベイスターズがマジックを点灯させた。
アンチ巨人の父は酒を飲みながら微笑んでいた。
(トゥービーコンティニュー)

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