28時くらいの宵闇で
彼女は夜だけたまらなくかわいい。
僕らが出会ったのは、28時すぎの荒れた海だった。
眠れない夜、僕は浜辺で時間を潰す。
この子もきっとそうなのだろう。そう思うと自然と話しかけていた。
甘い声でいかにも女子っぽい話をしてくる。
恋愛のこと、占いのこと、好きな音楽のこと。
僕には全然ピンとこない世界の話だった。
「好きになったら困る? 困るよね、今日会ったばかりなのに」
「え」
「素敵だなって」
朝になる前に解散した。僕は何も返事ができなかった。
翌朝。高校の玄関で彼女に会った。
まさか。ウソだ。信じられない。
彼女は同級生だった――。
「こっち見んな、死ね!」
昨日の彼女を思い出そうとする前に、右ストレートを浴びていた。
彼女は夜になるとかわいくなる、そんな症状を持つ子だった。
いや、昼になると猟奇的になるヤバい子だった――。
僕は惚れてしまっていた。