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お料理教室で匙を投げるな!

雨でも雪でも風が強くても、アタシは料理教室へ向かう。暇だから? 習慣だから?
いや、違う。運命とかそういうモノ。そんなふうに思う。だって……。

料理教室との出会いは突然だった。
駅へと続く三叉路を足早に歩いていたアタシ、エプロン姿で外からサザエさんのように慌てて走ってきた洋子先生。
ドン! パツっ。

その二人が少女マンガの第一話のように正面衝突したのだ。アタシは衝撃と驚きで尻餅を突き、スタバのラテを高々と放り投げていた。
一方の洋子先生は空高く飛び上がり、草むらに落ちていた。でも、怪我はなさそうでガハハハと大笑いしていた。なんだか魔女みたいな人だなと思った。
それが、洋子先生の第一印象だ。

んで、汚れた服の着替えをするために、洋子先生の家、すなわち料理教室へと足を運んだ。その日はグラタンの匂いがした。懐かしくてそれでいて新しい、心地よい香り。こんなの初めて!

洋子先生はちょうど20歳年上でバツイチだった。元気良くて優しくて誰にでも平等で、料理がうまい。
特にイタリアン系は絶品!
アタシのこともすごい心配してくれて、知り合いのイケメンとお見合いもした。3股のクソ男だったけど……。同じ教室に都さんはミシンをもらっていた。
非の打ち所がないの。何、神? 女神的ななにか?

でも、気づいてしまった。
洋子先生は必死に隠そうとしていたみたいけれど。

アタシを虐待して養護施設に預けた母親だってことに。
思い出すだけで震えるママだってことに。
ねぇ、なんで?


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