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推しに敷かれて眠りたい

夜も眠れない東京の街。のちょっと外れた最寄り駅。
あたしたちオタクの間では、推しがこの周辺で暮らしていることは有名だった。コンビニで見かけたなど、タクシーで降りてきたなど、我々の犯罪スレスレの情報網がキャッチしていた。

そんなわけで給料の半分を削ってこのマンションに住んでいる。
奇跡を信じて暮らしていたある日。
某週刊誌で推しがアイドルと自宅マンションに入る写真が掲載された。
やっちまった……。とアタシは思った。
エントランスが明らかにウチと違う。
最悪だ。最低だ。

推しが誰と付き合おうが誰をお持ち帰りしようが関係ない。
推しと一つの屋根の下で暮らしたかっただけ、だ。

悲しみに暮れていた翌週。
推しと人気を二分するメンバーのグラドルお持ち帰り写真が流出した。
女性を抱きしめながらマンションに入っていく背後に映るエントランスは、間違いなくウチだった。
やっちまった……。

すると上の階からドンドン、ドンドンと物音がする。
こんな高級マンションでも上下の揺れや音は防げないようだ。

うっとおしいな、と思っていると体が乗ってきていることに気がつく。
このリズム。
推しがいるメンバーの新曲のリズムと同じだ。
誰かが上の階で推しの曲を踊っている。
そう、あいつだ。
あいつ呼ばわりするほど嫌いな推しのライバルが、上の階にいる。

流出写真、激しく揺れる天井。
それだけじゃ不十分だ。
しかし、深夜のエントランス。
あいつがへべれけの状態で、あたしの乗っているエレベーターに駆け込んできた。
「8階……」
「は……い」
「あ」
あたしは大好きな人の隣にいる、大嫌いな男にいきなりディープキスされていた――。

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