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俺じゃ物足りない不倫

今夜もテーブルには冷めた肉料理が置いてある。わざとらしく――。
それをひとつまみする。
冷めた料理は意外とおいしかったりするから不思議だ……。

日に日に、夫婦の会話が減り、夕食のおかずが減り、ベッドで体を交わせることもなくなった。

そう、うちの妻は不倫している。

相手は、同じ部署の後輩で、コンペを勝ち抜いてプロジェクトを実行させた憎らしい男だ。
女性から見たら細マッチョのモデル体型で高い鼻と茶色の瞳を持つ完璧顔面の持ち主で、スペックは最強。
社内の女子社員はみな彼を気にしていたはずだが、まさか自分の妻が寝取るとは……。

そう、彼も結婚したばかりで、24歳の元ミス成蹊大で今は秘書をする美人奥様がいた。
にも関わらず、モテる男というのは実に野蛮なもので、いつのまにかうちの妻に手を出していたのだ。
妻は俺と同じ32歳。後輩は26歳。6つも違うが、その歳の差を妻は利用したのだろう。妻はドスケベだ。
「まったく…」

そんな俺は、今、後輩の美人奥様と不倫している。こんなあどけない子はいない。
家に帰っても妻はいないので、ちょうどいいのだ。

ねじれているようでねじれていない俺たちの不倫関係。俺たちの会社は、そんな痴情で満ち溢れている。

そして、今夜。
俺は嫁と寝ている。復縁したワケではない。

俺が後輩と体が入れ替わってしまったのだ。
つまり、嫁は俺のことを後輩だと思って抱いている。というか、肉体やあそこは後輩なのだから、むしろ大満足だし、俺であることを告げても、こんな真っ最中はどうでもよいだろう。

一方、違う場所のラブホテル。
後輩はミス成蹊の秘書と寝ている。普通に考えれば、妻だ。
しかし、後輩の肉体やアソコは俺のまま。
普段通りに振る舞えず、萎えている。
こんな体や動きにアンアンと感じている嫁は、「やはりまだまだ若いな」と悟る。

複雑な夜を終えて、俺たちは一度話し合うことにした。
それが奇跡を生み出すとは、全く思わなかった――。


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