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マンホールの蛙、大海を知らず

俺は父さんの趣味に付き合って、マンホールで過ごしている。

夏はくそ暑いし、冬は激寒だけど、暗闇をずんずんと進んでいくのは楽しいし、スリルもあるし、何より発見が多い。
夏休みの自由研究で発表したら、学校から賞状をもらったこともある。

父さんは俺が何をしても、どこに行っても、文句を言わない。
父さんには他にやることがあるから。
それに父さんは俺よりずっと細くて暗い道に進んでいくから、俺はついていけない。それにカメラを持って撮影までしている。
まだまだだなぁと思う。

いつも遊んでいたのは大学付属高校がある近くの県道沿い。
そこのマンホールはかっこよくて好きだった。

でも、ある日から俺はマンホールに入れなくなった。
だって父さんしか、あの重いマンホールを開けられないから。
残念だけど仕方ない。

それぐらいから、県道から高校へ向かう女子高生たちがスカートの下にジャージを履くのをやめた。
夏はともかく、冬は寒いし履いていたほうがよさそうだけど、あの高校、ルールが厳しいらしい。俺は絶対に行かないな。
あそこのジャージはうちにも結構飾ってあったけど。

父さんはマンホールに入ると、太陽が差し込む側道のほうに行っていた。
せっかく暗いところに行ったのに、わざわざ陽射しが注ぐところに行かなくても……。まぁ人それぞれ趣味ってあるし。
たぶん、狭いところが好きなんだな。

早く父さん、帰ってこないかな。

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