初恋は急カーブでそれでいて美しい
なんかイヤな過去を思い出した。アタシのチョコが教室の後ろにあるゴミ箱に捨てられている。それをゆっくりつまみ上げて窓の向こうに投げ入れた、あの日のこと。
東京に住んで4年が経つ。それでもアタシはまだ大学生をしていた。
バイトに精を出しすぎて留年したのだ。最初は母ちゃんに黙っていたけど、何らかの通知が来てしまい、あっけなくバレてしまった。めちゃ怒られた。
ただでさえ旭川から東京にひとり娘を出すことを反対していたからなおさらだ。
母ちゃんはシングルマザーで父親も見当がついてなくて、それはそれはさもしい日々を過ごしてきた。なのに、アタシはそこから飛び出してしまった。ごめん、とは今でも思う。
春一番が吹く前の日。
アタシは初恋と出会った。本山君は社会人一年目のペーペーとしてうちのキャバにやってきた。
初恋の思い出がほんの少しあったけど、すっかり痩せこけて今にも死にそうな顔をしている。
アタシにも無礼な部長や係長。きっと、ブラック企業にいるに違いない。
あのときなんで、チョコ捨てたの?
なんでそんな辛そうなの?
なんで再開したの?
初恋は急カーブで唸りを上げた。
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