なんかaikoの曲みたいだね
あの星の上で花火見下ろしたいよね。
彼氏がaikoの曲みたいなことを言うので、一気に冷めた。本音でもわざとでも、とにかく気分が悪くなったことだけは鮮明に焼き付いている。
夏の真ん中ごろ。河川敷は蒸し蒸ししてただでさえ居心地が悪いのに、やめてくれよと思った。
蝉の声が響くなか、彼は「かき氷のシロップは全部おなじ味らしいよ」と笑った。
またこの人、aikoの歌詞を普段使いする素振りを見せた。
夏生まれだから夏好きだわ、やっぱり。
でも秋が一番好きかも。
ちょっと公園寄って行かない?
カルチャーに浸れない、そんな人にはなれない。でも、カジュアルには生きたい。
aikoを、軽率な自尊心に使うな。
結局、彼とはその夏で別れた。
7か月。半年と言わないのはちょっとした見栄とリアリティを出すためだ。
だって私にとっては一番長い彼氏だったから。
aikoはバラードも歌うし、飛んだり跳ねたりしてかわいいし、年齢不詳だし。たぶん、使いやすいんだ。
心地よい比喩も甘い女心も共感しやすいんだ。
ふざけるな。
アタシが誰よりも、アタシ以上にaikoを想う人いないから、いないから。
片耳を無くしたイヤホンを付けてまた恋を見つけようと思う。
aikoになれないアタシヘ。ありがと。