Wi-Fiないから君と逢えない

引っ越し先は築40年の木造アパートで、床がギシギシときしむ。2階の物音も耐えられたもんじゃない。

でも、それ以上にWi-Fiが繋がってないことにイライラしている。なんでこの家だけ……。

そんなわけで、俺は家から出られない。
いや、ベッドからも出られない。
あー、スタバの新作飲みたいのによ。

肩も上がらない。
頭もクラクラする。
最初の一歩が踏み出せない。
ダメな人間だ、つくづく。

なぜなら俺はWi-Fiで動くロボット人間だからだ。

あー。彼女でもいたら、フリーWi-Fiのあるチェーンカフェまで連れて行ってくれるのに。
モテねぇ男はツラいぜ。

そもそも、博士はなんで電気式の人間を作らなかったんだよ。
Wi-Fiで動くロボットってなんだよ。不便すぎるって。

ただ一つ蓄電方法がある。
愛のある口づけを交わすことだ。
いや、どんなオプションだよ。

こんな中畑清みたいな顔の男、惹きがないって。
韓流系にしてよ。

モテないロボットはつらいぜ。

あ。Wi-Fi見つけた。隣の家のだ。

パスワードわかんねぇよ。