絶対忘れないためにずっとずっと君を想い出すから
「ごめんね」
と、小声で謝られてしまったから、二人の関係は終わりだなとスマホ越しで思った。
それから大好きだった彼から、二度と連絡はなかった――。
でも、私は彼のことを忘れられなかった。
一分一秒たりとも。
そんな重い失恋から、はや10年が経とうとする。
彼以外は男と感じない、彼以外は人に見えない、彼以外は彼になれない。
だから私にとっての10年は、10日ぐらいの感覚だった。
そりゃあ、友人たちから合コンや婚活パーティーに誘われて無理やり参加することもあった。
でも、私の瞳に彼らは映るはずがなかった。
「好きな食べ物は?」「学生時代にやっていたスポーツって?」
「会社って女性多いの?」
どれだけ男たちが私に興味を示そうが、当たり障りのない答えしか返す気がしない。
会が終わってからもしつこく連絡がくる。
「今度、3対3とかで飲みませんか?」
「新大久保でカレー飲み会あるけど来ない?」
ホント、こういう下心がある男たちは大嫌いだ。
どうせ、ろくな恋愛にならないし、私が本気になることもない。
婚活パーティーだってそうだ。
みな、男たちは照れくさいのか下を向いてろくに質問をしてこない。
中間発表でもマッチングもしてこない。
きっと白紙で投票しているんだろう。
バカみたい。消極的な男がモテるはずない。
そもそも、私は高校3年の純愛を忘れられずにいる。
フードコートでゲームに興じる彼の真剣な眼差しは、10代特有のみずみずしさがあった。
でも、合コンやパーティーにくる男たちは無駄に洗練されているように見えて、ファッションサイトの焼き増しみたいな服装をしている。
私が思い続けた彼は違った。
半袖パーカーにダメージジーンズ、ドクロのネックレス。
誰もしていないオシャレをしていて、自分を持っているなと思っていた。
そんな彼は、今筑波の大学に入り、ロボット工学を勉強しているらしい。
検索していたら研究論文のPDFを見つけた。
胸が苦しくて最初は読むことができなかったけれど、ようやく開いてみることができた。
10年連絡がない彼を感じることができた。
気づいたら友人たちはみな結婚したり、恋愛を謳歌していた。
でも、それって純愛じゃない気がする。
お金のこととか容姿のこととか、下世話な話しかしない。
私の純愛は違う。
ペアルックでサンリオピューロランドに行ったぐらい。
その帰りに、4℃というジュエリーショップで指輪をもらったぐらい。
実にピュアでキレイな恋だ。
まぁ終電近くの改札の横で舌を絡ませるキスをしたこともあったけど。
3回ぐらい。
でも、あれは大勢に見せつけているようで気が引けた。
独身のやつらに刺されたりなんかしたら怖いし。
人間って嫉妬する生き物だからねぇ。
そんなこんなで私はいまだに男と結ばれたことがない。
でも、大好きな彼を待つしかないって決めている。
さぁ「月曜から夜ふかし」でも見ながら寝よう。