SETOUCHI ART COLLECTIVE CROSSING2023 GREEN を終えて。 【Part2】
展示作家・作品内容紹介
今回丸亀町グリーン西館1階にて行われた展示に参加した6名の現代美術作家を紹介します。
【香川県】高松 明日香(たかまつ・あすか)
以前「瀬戸内国際芸術祭2022 県内周遊事業 おいでまい祝祭2022〜心がつながる街ごとアート~」の際にけやき広場で展示した箱椅子アートを立体的に構成し、その側面にアート作品を設置する浮遊感のあるレイアウトを行いました。以前作品として展示した箱椅子を設置台としても使用するという斬新な手法に、アートコレクターや初めてアートを買うという層まで幅広いお客様の関心を集めました。
高松さんは身近な風景や画像を独自のトリミングと筆触を使って、絵画にしています。組み合わされて提示されることで、まるで彼岸の世界のような装いで目の前に現れ、鑑賞者は引き込まれていきます。
《ドローイング》シリーズは、今回初めて出展された作品で、紙から制作されています。縁の有機的な形はなにを意味しているのでしょうか。
制作過程についてはインタビューがありますので、ぜひご一読ください。
【香川県】樋口 聡(ひぐち・さとし)
正面の大型ショーケースに、キルト素材を用いて建材や生活の中にありふれたモチーフを制作・展示しました。
“建造物の解体工事を眺めていると、重機によって次々と瓦礫がトラックに積み込まれる。まだまだ使えそうに見えるがどうやって処理されるのだろうと考えてしまう。使えるものと使えないもの。生まれ変わりと消失。理想と現実。埋まらない空白部分をテーマに、キルティングを使ってポップな立体造形で展開する。”
上記のテーマを表現するため、天井の格子から吊るすことで浮遊感のある独特の雰囲気を形成し、店内を行き交う人々の注目を集めました。
それぞれが、元々はどのような物たちかを想像しながら鑑賞するとまた違った一面が見えてくるように思います。
例えば、《Tsukaishi (Stripe)》や《Hashira (Hozo)》で元となった建材たちは実用性や機能性を追求するために使用されます。一方、キルトは主に美的な価値や快適さを追求するために作られます。建材をキルトに置き換えることは、実用性と美的価値の対立を表現しているとも解釈できます。
私はその対比の中に、戦争や紛争において固定的な思考や構造が支配的であり、柔軟性や変化の必要性が欠如していることに対する抗議や反論を表しているようにも感じました。
キルトシリーズは、今回初めて出展された作品です。制作に至るアイデアなどのお話がインタビューにありますので、一度お読みくださいませ。
【香川県】PORTRATOR
今回の作品は、油絵とジークレープリント2種類の表現技法を用いて大型の人物肖像画です。作品は大型のもので幅1m程度。
ネットに溢れる人の画像をサンプリングし、パーツを組み合わせ生成した人物に油絵の具・ジークレープリントの異なる手法で質感を与えています。
西洋画の面で捉える描き方や日本画の線で捉える手法を画面の中でミックスさせる独特の表現となっている今作品は、海外や比較的若い層(20代〜30代前半)のお客様がじっくりと立ち止まって鑑賞されました。
この作品は、ネット上に溢れている顔などをサンプリングして制作されています。それはまるで、AIの発展によって私たちがますますデジタル上の存在となっているかのようにも捉えられます。
作品自体は架空の人物ですが、私の一部の「肖像画」とも言えるのではないか。個人的にはそんな奇妙な気持ちで立ち止まって眺めてしまいました。
さまざまな視点や洞察を与えてくれるこの作品に対するインタビューがありますので、どうぞご一読くださいませ。
【岡山県】金 孝妍(キム・ヒョヨン)
銀箔と鏡の反射をモチーフとした、和風の作品群を制作。
フィッティングルームの鏡張りの部屋や奥まったバックヤード等の空間に作品を設置し、光と影を巧みに用いた展示を行いました。2022年の「せとうち観光専門職短期大学」での合同プロジェクトがあり、その際に参加された学生や先生が来場。プロジェクトの冊子なども配置し、作品の繋がりを説明するなどコミュニケーションの多い展示となりました。
環境や場所等の「関係性」をテーマに身体を直に介入させその相互作用の痕跡を作品に仕立て上げていく、という金さんの作品たちは会場の空気によってその色を変化させるなどいつまでも眺めていたいと思わせる作品が多いです。また、その作品を誰かと分かち合いたい、語り合いたいと思わせる不思議な力を持っています。
どのような経緯でアーティストの道を選んだのか……インタビューに掲載されていますのでどうぞご一読くださいませ。
【岡山県】辻 孝文(つじ・たかふみ)
筆のストロークをキャンパス自体に用いる特殊な技法で、12点の人物を描いた作品を展示。棚の下部には、けやき広場でも展示(※瀬戸内国際芸術祭2022 県内周遊事業 おいでまい祝祭2022〜心がつながる街ごとアート~)を行った大型のタペストリーを設置しました。
海外や若い層に特に人気があり、作品の前で自撮り写真を撮るお客様も多数見られた。また、前回の「おいでまい祝祭」の際の作品(大型タペストリー)に覚えがあり、来場してくれるお客様も多数。
今回初めて制作された《brush stroke on paint 》は12連作となっています。ブラシのストロークそのものがキャンバスとなり、浮かび上がる人物像と鮮やかな色に魅入られます。
なぜ、このような作品を思いついたのか。下記にてご一読できます。ぜひどうぞ。
【岡山県】名合 貴洋(なごう・たかひろ)
ガラス棚にDeer、Cloud、Birdと名付けた3種類の自然をモチーフとした平面絵画を設置。実際に目にしたものを3DCGにし、それを絵具で描き写しています。肉体のある人間としての局所性と、インターネットによって世界中とつながる非局所性が自己の中に同時に存在する感覚を表現。
作品はカラフルなカラーバリエーションで複数点制作されており、ほかの作家作品群とは異なる鮮やかな印象を会場に与えています。
親子連れや若い層が熱心に作品を鑑賞していました。
遠目に見るとプリントのようにも見えるカラフルな作品たちは、全て一筆一筆最新の注意を払って描かれています。虫眼鏡やルーペで見ていただければわかるのですが、極限まで削られた筆跡のタッチが、牧歌的な作品と対照的な緊張感に彩られています。
もともと化学者を目指してアメリカの大学に通っていた名合さんが、どのようにしてアーティストになったのか。ぜひご一読くださいませ。
おまけ:グッズの展開
今回は、中央テーブルには6名の作家の作品を「ポストカード」、「A4クリアファイル」、「トートバッグ」、「額縁付きポストカード」「額縁付きポスター」と購入しやすいグッズとして制作・販売を行いました。
さらに、作家の制作過程の一部も販売。来場の記念として購入されるお客様が多数おられました。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
次回は最終回、来場者の方の反応やギャラリー運営に関する課題と今後の展望についてお話ししたいと思います。今しばらくお付き合いくださいませ✨
To be continued…