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夜と創作のおはなし ~ぐうたら絵描きの哲学みたいな時間~
こんばんは。
一田セトです。
唐突ですが皆さんは「夜」というとどういうイメージを持たれるでしょうか
暗い、イルミネーション、星、月、闇…
色々出てくると思います。
ボクにとっての「夜」は創作のための特別な時間です。
★紫外線アレルギー
ボクは子供の頃から中度の紫外線アレルギー持ちで夏場に昼間の太陽を浴びると、日が当った場所が真っ赤に腫れ上がってしまいます。
そのため現在は日焼け止めが無いと夏場はロクに出歩けないです。(小学生〜高校生時代はマシでしたが20代になるとアレルギーが悪化しました、何故だ)
そのためか、小さい頃から夜が好きでした。
地元が田舎なので夜は星も月も綺麗に見えるし、昼間の喧騒を離れた夜の静かな空気が心地よいのです。
★夜になると創作意欲が湧く
展覧会や同人誌イベントなどの〆切に追われるとさすがに時間が取れる日は昼間も描きますが、基本的に夜の方が創作意欲がモリモリ湧きます。
先程も書きましたが夜の空気感や情緒、寝静まった静かな時間がボクはたいへん心地よいです。
夜になると頭の創作スイッチがONになると申し上げましょうか…
夕暮れ時から絵を描き始めることが大半です。
夜がボクに「さあ描きなさい」と…言っている気がするのです。
実際ボクの最近の絵は星空や夜の宵闇を切り取っていますし、それが最近は描いていて凄く落ち着きます。
今年の作品はとある尊敬する作家さんに影響されて夜や影を連想させてくれる黒を基調にしていますが、学生時代に先生が
「あなたはね。黒の使い方を勉強しなさい、強い武器になるわ。」
と助言してくれたのを思い出しました。
もしかすると夜が好きなのを先生は本能か勘で見抜いていたのかも知れませんね。
大事なヒントをくれた作家さんと先生に、菓子折を持って行って感謝したいです。
↑切り絵の習作。昔からやたらにモチーフとしての星に惹かれています。何か繋がりがあるのかも知れませんね。知らんけど(関西人の魔法のむすび言葉)
★光と影、昼と夜
何事もですが世の中の事物は「光」と「影」で出来ている気がするのです。この話だと
昼=光
夜=影
という考えですね。
光は影がないと味気なく退屈ですし、影も光が無いと存在しません。
ボクは基本的に内向的な性格の人間なので間違いなく「影」の人間です。どちらかというと裏方で仕事をする方が好きですし。
紫外線アレルギーや、夜になると創作スイッチが入ることや、基本的にあまり騒ぐのが好きではないということを加味したらほぼ「影側」の人間で間違いないと思います。
(余談ですが人とギャーギャー騒ぐのも苦手です)
…話が脱線いたしました。失礼。
絵にも光と影があると思います。
観る人に陽気なトーンで語りかける昼の光のような絵、静まり返った夜の影のようなトーンで語りかける絵…
といった具合です。
あくまでデータでの根拠の無い私見ですが。
モネの絵は間違いなくボクの中では「光側」の絵です。
ゴッホの絵は間違いなくボクの中では「影側」の絵です。
どちらも素晴らしい作品達です。
どちらかが欠けてしまったら、酷く寂しい世界になってしまうと思います。
★ところがどっこい夜は怖かった
夜万歳といった調子で今までの文章を書いたボクですが万事中庸という物が大事なのか、夜の暗さが初めて落ち着かない事が最近ありました。
ついこの間しし座流星群を観に、地元の海浜公園へ夜中出かけた時です。
辺りは街灯もない真っ暗闇…空港の飛行機の発着音だけがゴォゴォと響いてその時点で大半の人は不気味さを感じるかと思いますが、生垣に腰掛けて空を仰いだ時に満点すぎる星空を観るとなんだか自分一人だけが宇宙に放り出された気がして酷く不安になりました。小さい頃迷子になった不安感に似ています。
周りは知らない人だらけで自分だけがポツンといる感覚です。
人工の灯りがない(厳密に言うと極端に少ない)世界がこんなに心細いとは…と。
やはりボクも人間。暗い場所で心細くなる事もあるのでした。
全然絵と関係ないおはなしに思えるかも知れませんが何事も対(つい)になっているのです。
黒い絵に色彩をもたらすには明るい色を差し色にした構成が必要です。
影が綺麗な写実画には光が必ずあります。
逆もしかり。
両方がないと存在しない、両方がないと面白くならない。
陽気な人がいるから、物静かな人の思慮深さが強調されますし
物静かな人がいるから、陽気な人のバイタリティが鮮明になる
といった
「全ては光と影で出来ている」
なんだか哲学の問答みたいなおはなしですが、最近は特にそう思うのです。
つまり絵も人も、全てが精神的にも物理的にも概念的にも「光と影」で出来ていると。
★夜は明けるし日は沈むから世界は回っている
当たり前ですね。
けど、当たり前のことを再確認したり有難く感じたりできるのが絵のいい所です。
夜になる、昼になる
どっちにも属さない朝陽が昇る瞬間、陽が昏れる瞬間が鮮明で特別な時間になる
花が咲くと幸せになるし、散るとなんだか寂しくなる
人が産まれる時に周りの人は喜ぶ、人が死ぬ時に周りの人は涙を流す
静かな夜にアレコレ考えて創作していると哲学と創作はやっぱり深く結びついているなぁ…
と、途方もない現実の世界に感激したりするのです。
昨今のCOVIDー19による世界的パンデミックの悲劇もやがて終息して、また暖かいお日様の下でマスクなんかせずに人々が抱き合って喜べる朝が必ず来ます。医療の仕事をしている人達に感謝ですね。
何事も光と影。
ボクが死ぬとボクの絵は二度と産まれなくなりますし、仮に「死なないようにしてあげる」と神様に言われて永遠の命を貰うことがあったとしても、描く絵はやがて抑揚のない…無味無臭で人間の匂いが全くしない無機質の極みのような作品が次々できてしまうと思います。
終わりがいつかあるから、人間は物を創るのだと思います。
けど絶対に永遠に終わらない事物があるとすると…
それはあらゆる作品に宿った魂だと思います。
必死に光と影、夜と昼を駆け抜けた人間の証だと言えるのではないでしょうか。
そう考えると、絵を創れるボクはとても幸せです。
真夜中の換気扇の下にて、温かいお茶をすすりながらそう思います。
ぐうたら絵描きの、うわ言でした
おやすみなさい。
明日からは何を創ろうかな?
一田セト