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家族や友人も里子を見守るチームの一員へ。「里親カフェ〜共働き編〜」レポート

実際に子どもを養育された経験のある里親さんをお招きし、直接お話を聞く「里親カフェ」を9月21日(土)に開催しました。

今回のテーマは「共働き編」です。里父母それぞれがお仕事を続けながら養育家庭に登録されたお二人にご登壇いただき、仕事と養育を両立するための工夫について伺いました。

当日は、フォスターホームサポートセンターともがき(以下:ともがき)より里親制度のご説明を行った後に、里親さんご夫婦による体験談をお話しいただきました。参加者の方も質問や感想などをお話しくださり、和やかな時間となりました。



◆制度説明〜子どもたちのための里親制度〜


まずはじめに、ともがきのスタッフより、事業内容や里親制度についての説明が行われました。


ともがき 私たちは、世田谷区にあるフォスタリング機関(里親養育包括支援機関)です。区から委託を受け、里親養育にかかわる支援を包括的に提供しています。具体的には、①里親制度の普及活動、②里親の研修事業、③里親委託に向けたマッチング、④里親養育の支援の4つの事業を行っています。

里親制度は、子どもたちのための制度です。子どもがほしい大人のための制度ではありません。
親の病気や死亡、虐待など様々な理由により、保護者と一緒に生活ができない子どもたちを公的な責任で育てていく「社会的養護」の仕組みの一つです。

社会的養護には、里親制度などの「家庭養護」と児童養護施設などの「施設養護」があります。日本では家庭養護と施設養護の割合が2:8となっており、国としても、家庭養護を推進すべく、里親を増やしていこうという動きがあります。

里親の養育期間は、子どもたちの状況によって異なり、数日から数か月のこともあれば、10年を超える委託になることもあります。私たちは、同法人のなかで、児童養護施設も運営しており、その中で培った経験を里親子に還元しています。

世田谷区では、「里親子が暮らしやすい街は、きっと、あなたも暮らしやすい街」というキャッチコピーを掲げ、里親委託の推進を進めています。


◆里親体験談〜共働きで里親養育を続ける工夫〜


続いて、里親をされている大嶋明さん、ひとみさん ご夫婦(いずれも仮名)にご登壇いただきました。大嶋さんご夫婦は、里親登録される前から、里子との生活を始めて以降、現在に至るまでお仕事を続けています。里親登録をしたきっかけや仕事と養育の両立について、お話しいただきました。


ひとみさん 私は、仕事の中で子どもに関連するイベントを行うこともあり、もともと子どもに関心がありました。私たち夫婦には実子がいなかったこと、友人が海外に住んでいて、人種も年齢層もバラバラの子どもたちと家族になっている事例を聞いたことがあることから、自分たちが里親登録をするという選択肢も視野に入っていました。

私自身が調べすぎると不安になってしまうタイプのため、あえてあまり調べずに里親カフェに参加し、そのまま里親になるための研修も受講しました。研修の後半で、家族や職場の主要なメンバーに里親登録の了承を得てほしいという話があり、それ以降、家族や職場に自分たちが里親登録を考えていることを話すようになりました。

私の仕事は、不定休で外出の時間もまちまちで、長期出張もあります。仕事のメンバーが集まる挨拶の場では、必ず最初に、「小学生の子どもがいるので、急にお休みすることがあるかもしれません」と伝えて、理解を得るようにしています。

里親を始める前までは夜間帯の仕事もありましたが、今では午前中から仕事を始めて17時には退勤させてもらえるようになったのが、一番大きな変化ですね。


明さん 僕は会社員をしています。コロナ禍以降はリモートワークが増えたものの、早朝や夜間帯にも仕事をしていたり、時折、出張が入ったりすることもありました。職場の上司や同僚だけでなく、取引先にも里親をしていることを伝えていて、働き方に配慮をしてもらっています。

里子のしおりちゃん(仮名)がまだ小学生なので、生活習慣を整えるために、18時半から20時には、打ち合わせを入れないように工夫していますね。なるべくしおりちゃんと晩ごはんを一緒に食べるようにしています。

また、お互いの仕事の時間がバラバラなので、オンラインのカレンダーアプリでお互いの予定を共有しあって、調整するようにしていますね。

ひとみさん しおりちゃんが小学生でお話ができる年齢ということもあり、本人にも私の働き方の特性を説明しています。「あなたのことは大切に思っているけれど、それと同じくらい仕事も生きがいなんだ」と伝えています。しおりちゃんとしても、仕事は楽しいものなんだと思っていてくれるような気がします。出張時には、明さんと二人で過ごしてもらうなど、しおりちゃんにも協力してもらっています。

私たちは実子もいないので、最初の頃は、子どもの病院選びや服をどこで買うのかも手探りでした。今では、近所のお母さんたちにも仲良くしてもらっていて、いろいろと教えてもらっていますね。

明さん 私たちの場合は、里子を育てていることをオープンにしているんですよ。家族や友人にも里親として子どもを受託していることを積極的に伝えて、一緒に遊んでいますね。親戚がどんどん増えていくような感じで、家族や友人もしおりちゃんの成長を見守る一員になってくれています。しおりちゃんも、存在を承認されている感覚があるようで、喜んでくれていますね。

これまで里親研修を受けてきた中で、「チーム養育」という形があることを学びました。子どもを中心に据えて、里親や学校、児童相談所、フォスタリング機関などが協力して子どもを支える仕組みです。しおりちゃん自身も、自分には「チームしおり」という存在がいると自覚し、喜んでいます。


「チーム養育」は、世田谷区が里親さんによる養育を推進する中で大切にしている考え方のひとつ。
この体制により、里親さんは地域で子育てをする中で生じる悩みや不安を、様々な専門性を持つ支援機関と相談しながら養育することができます。


◆里親さんとのトークタイム〜社会で子どもを育てる〜


後半は、参加者の方からも感想や質問をお話しいただき、全員で語り合う時間を持ちました。今回は参加者が一家庭のみだったということもあり、イベントに参加してくださった経緯や日頃の養育観なども含め、じっくりとお話を進めることができました。

参加してくださったのは、未就学の実子が2人いるご夫婦。いつか子どもが大きくなったときに里子を預かることができたら、子どものためにも社会のためになるのではないかと考え、今回参加してくださったそうです。

参加者 子連れで児童館に行くと、「子どもが迷惑をかけてすみません」と言いながら頑張っている親を見かけることが多いんです。その度に「子どもは社会で育てるものだから、もっと大人同士が頼り合えたらよいのではないか」と考えていました。


里親家庭を含め、どんな家庭であっても、地域の誰もが子どもたちの成長を支え、子育てに協力しあえる街を目指すという世田谷区の「里親子フレンドリーシティ」の考え方にも通じる価値観をお持ちのご夫婦でした。


その後、話題は養育家庭としての「さまざまな預かり方」に。

大嶋さん うちもレスパイト・ケア(※)を活用することもあります。

参加者 家族のあり方に正解はないことを子ども自身が気づく機会にもなりそうですね。

大嶋さんご夫婦の話を受けて、自分たちも実子のために、日常生活の登場人物を増やしたいと感じています。血のつながりだけが親子ではなく、血のつながらない家族の形にも関心がありました。

※レスパイト・ケアとは、里親子の一時的なリフレッシュを目的に、短期間(土日や長期休暇等を活用して)里子を別の里親のもとに預けることができる制度のこと。冠婚葬祭・疾病等で委託中の子どもを養育できない場合も活用することが可能。

里親委託では、施設での養育と比較して特定の大人が子どもの育ちにかかわることができるため、愛着関係が形成されやすく、子どもの発達保障にも大きな影響を与えるという特徴があります。
愛着の土台ができることで、子どもは社会の中でさまざまな人間関係を築いていくことができます。

大嶋さんご夫婦や参加者からは、家庭に近い環境を求めている子どもたちに、すぐに手を差し伸べるための選択肢として、里親が広がっていくと良いという声が挙がりました。

一方、今回の里親カフェを経て初めて、養育家庭(里親)と特別養子縁組の違いについて知ったという声も。
里親と特別養子縁組は混同されやすいですが、地域の現状や子どものニーズに沿って、さらなる制度の周知が望まれます。

里親さんとのトークタイムを通して、養育を家族のなかだけで閉じるのではなく、さまざまな大人と交流できる機会をつくったり、社会全体で養育したりしていくことについて、話を深めることができました。

今後もテーマを変えながら「里親カフェ」を開催していきますので、関心のある方はぜひご参加ください(こちらから随時お知らせが更新される予定です)。


★次回の里親カフェは25年1月18日(土)に開催!
お申し込みはこちらから

https://forms.gle/BtMszTHFNuzczotx8

◆最後に

里親になるためにはいくつかの要件がありますが、特別な資格は必要ありません。関心がある方は、以下をご覧ください。


また、本noteでは、過去のイベントレポートも掲載しています。こちらも併せてぜひご覧ください。


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