楽描き「タンポポ」
花壇の花を全部抜いて
君は言ったね
「これで、世話しなくて済む」って
金木犀の残り香だけが
亡霊みたいに漂っていた
横断歩道を渡れなかった
わたしの横を
右手を上げて君は渡っていく
その後ろを歩いていれば
安全な気がしていたんだ
いつも正しいを決めるのは君だった
いつもわたしを見下ろす君だった
そして、時が経ち
君が抜いた花壇にポツンと
抵抗するように咲くタンポポ
もっと咲けばいい
何度も抜かれてしまえばいい
そして、また、咲くんだ
迷いの糸を断ち切るように
君にさよならと言う
君が欲しかったのは
「水のいらない花」
わたしには水が必要だった
わたしがタンポポだった