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品品喫茶譚第89回『京都 茶の間 やはりカレーは辛い』

前回の文章より一週間後、また茶の間にカレーを食べに行った。
前は小雨降りしきる中をチャリで乗りつけた私だったが、今日は市バスで店を目指した。
自室の最寄りバス停から出ているバスだと、店から少し離れたところに停まるので、少しウォーキングする必要があるのである。今回はそのウォーキングのせいもあってか、ビーフカレーに辛さは普通というお馴染みのやつに、ライスは大盛というチョイスをした。
前回の文章で、私はあまりルーをかき混ぜずセパレートしたまま食いたいなどとほざいていたのだが、初めてのライス大盛に対し、気負いもあったのだろう。食べ始めるや、ルーが全然足らず、これまた初めてのおかわりを申しでることになった。
なんてお得なんだろう、ありがたいなあ、と残りのライスにシャバシャバとルーをかけ、再スタートをきる。お店の方に声をかけるまでに結構もたついたため、体を十分休めることができた。
はずだったのだが、この初の追いルーから、おそらくライスとルーの微妙な力関係、いやさバランスみたいなものが全く変わってしまったのだろう。とにかく辛くて汗がでる。真夏でもこんなに汗をかいている馬鹿がいるだろうかと思われるくらい汗をかき、カレーに立ち向かう。
そんな私のみすぼらしい悪戦苦闘を察した店の方がすかさず新しいおしぼりをそっとテーブルに置いて下さった。もちろん定期的なお冷の継ぎ足しもぬかりはない。そんなありがたいサポートもあり、なんとかカレーを完食することができた。
この店のカレーは辛いけれど、本当にクセになるのだ。
食後の珈琲のうまいこと山の如しで、すっかり汗も引いてサラサラ。喉元過ぎればなんとやらで、すぐに余裕をぶっこき始めるのが私の悪いところであるが、それもすぐに戦慄へと変わる。
近くの席の赤子を連れた夫婦の父親がこともあろうに、大辛を注文したのである。
辛いですよ、というお店の方のアドバイスもどこ吹く風。和やかな雰囲気。
珈琲片手にふんぞり返りながら、父親が辛さにいまにもアワアワし出さないかと目の端っこでその動向をやんわりチェックしていたが、一向にそんな気配すらない。父親はカレーにうまそうにパクついており、やおら店の方を呼ぶと、なんとルーのお代わりを宣言した。
「中辛で!」
やはり少し辛かったのだろうか。とはいえ中辛だって相当なものだ。もちろん確認した訳ではないが、もしかしたら彼のカレー(シャレではない)は、本気のダッシュから、ゴール後の整理運動に入ったのかもしれない。辛さに強い人って頼もしいなあ。
あまり関係ないが、店の近くには京都御所がある。私は御所の敷地内に点在する街灯を見ると、かつてその下で僅かな時間も惜しんで読書したという車谷長吉のことを必ず思い出す。確かそんなエピソードを何かで読んだのが、ずっと頭にこびりついているのである。
自室に帰るまでが喫茶店。自室の途中に思い出すエピソードも全部喫茶店なのである。つまり全ては喫茶店である。よく分からなくなってきたので今日はこのへんで。
ばいちゃ。

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