世田谷ピンポンズ

フォークシンガー。HP: http://setapon.boy.jp/ twitter…

世田谷ピンポンズ

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  • 品品喫茶譚

    暇さえあれば喫茶店に行く。テーブルの上に古本屋で買った本を広げて、珈琲を飲む。ぼーっと窓の外の風景を眺める。 初めて訪れた街では喫茶店を探し、住み慣れた街に新しい喫茶店を見つけては歓喜する。 喫茶店を中心とした日々の生活記録。

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    過去の随筆・習作です。

  • 尾道滞在記

    一週間の尾道滞在記録。

  • Sアパートメントの記

最近の記事

品品喫茶譚 第108回『名古屋 高岳 届かなかった喫茶ボンボン』

久しぶりに名古屋に用事ができたので、ボンボンに寄ろうと思った。 用事は夕方からだったので、久しぶりに鈍行を乗り継いで名古屋に向かうことにした。 京都、米原、大垣、名古屋。乗り換えは2回。 所要時間は確か三時間くらいだったはずである。平日で空いてそうだし、読みかけの本をひねくっているうちに着くだろう。こういう小旅行は私の最もテンションの上がるスタイルのひとつでもある。 最近はもっぱら時短のことばかり考え、新幹線を使う大甘にたるんだ己の精神を大らかな小旅行で見つめ直すのだ。 京

    • 品品喫茶譚 第107回『神戸 元町 はた珈琲店 アルファ 後篇』

      翌朝も神戸は晴れておった。 早速どこかでモーニングをきめるため、アーケードをうろつく。日曜ということもあり、サントスやエビアンは混んでいた。 そんなとき、ふと三月に本の栞でイベントに出た際に、弐拾dB藤井がよく行くと言っていた「はた珈琲店」を思い出した。店は三宮、元町とひたすら続くアーケードの、やや端っこに近づいたほうにあった。入ると、私の他にはお客がひとり。カウンターに座り、アイス珈琲とトーストを頼む。カウンターだと、目の前にマスターがいたりして緊張してしまうものだが、ここ

      • 品品喫茶譚 第106回『神戸 元町ボ・タンバリンカフェ 前篇』

        8月24日土曜日。花森書林での独演会以来一か月ぶりの神戸。 夜に元町ボ・タンバリンカフェで催される友部正人×豊田道倫を観に来た。 京都から新快速に乗り、三宮で降りる。いつもならばここで乗り換え、たった一駅の元町まで電車で行くのだけども、今回は三宮を少し歩こうと思った。ライブの開場時間までに数時間あるし、締め切りの近い原稿もある。毎週土曜日21時更新の喫茶譚も書かねばならぬ(喫茶譚はいつも更新日当日に書いている)。つまるところ、三宮から元町の間で喫茶店を見つけ、そこでノートパソ

        • 品品喫茶譚 第105回『東京 下北沢ニュー風知空知 街の灯』

          9月18日にライブさせていただくことになったニュー風知空知は、まだ店名が風知空知だった時代によくライブをさせていただいていた。 ツイッターの検索機能を使っておのれのツイートを遡ること十二年。 2012年2月、かの店で初めて企画したのが「おばけ少年の集い」という当時、下北沢の街で何回か開催していた弾き語りライブだった。 そのときは漫画家の古泉智浩さん、奇妙礼太郎さんに出ていただいた。 同年9月には初の全国流通盤『H荘の青春』をリリースし、レコ発ライブを行った。 このときの共演は

        品品喫茶譚 第108回『名古屋 高岳 届かなかった喫茶ボンボン』

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          品品喫茶譚 第104回『ピンポン喫茶淡』

          こんなの書いてなんか意味があるのかい。 ずいぶん続けているようだけど、本当によくやるよ。 毎週、毎週、己の話ばかりで、君はどれだけ自分が好きなのかね。 他にもっと考えなくちゃならないことが沢山あるんではないかい。 さっきからアイス珈琲ちゅうちゅう吸って。 なるほど。そうやって阿呆面さげて、いつもちゅうちゅうやっているわけだ。 嫌にならないかい? あ、店員さん、おかわりください。 ふむ。しかしまあ、いつもいつも同じことばかりしていて飽きないってのもある意味才能なのかね。あ、これ

          品品喫茶譚 第104回『ピンポン喫茶淡』

          品品喫茶譚 第103回『京都 烏丸御池ユニオン』

          京都に住んで早いもので十一年になるわけだけれども、当たり前だが行ったことがない喫茶店が沢山ある。 なんで行ってねえんだ、と自分に言いたくなったのが、こないだ教えてもらったユニオン。 もしかしたら元々は名曲喫茶だったのだろうか、結構広い店内は二人がけの席が並んでいる。もち四人くらいで座れる席もある。席はすべて奥のほうを向いており、奥にはテレビがある。私が行ったときには「虎に翼」がやっておった。良いドラマだ。 テレビの横辺り?にはスピーカーがあり、これを見て、あーなんとなく名曲喫

          品品喫茶譚 第103回『京都 烏丸御池ユニオン』

          品品喫茶譚 第102回『京都 翡翠 花の木』

          モーニング終了10分前に店に到着し、「まだいけます?」などと、店員さんにたずねる。 もちろんOK。 モーニングの境目にいて、おはようございますとこんにちはの境目を考える。私は10時半だと思っているが、人によっては11時かもしれない。そう思って、10時45分くらいにこんにちはと言ったところ、ああ、おはようございますと返されることがあった。 で。 最近は翡翠で仕事をすることが多い。本もしこたま読む。実家にあったものと同じ柄のソファーは、もはやなくなってしまった実家を思い出すよすが

          品品喫茶譚 第102回『京都 翡翠 花の木』

          品品喫茶譚 第101回『神戸 元町ファイン 花森書林で歌うのこと』

          トンカ書店でのGIGから八年。 トンカ書店の後継店である花森書林でのライブが実現した。 入り時間の二時間前に花森書林さんに着き、荷物を置かせていただく。目指すは三月、本と栞での凡夜READING CLUBの際に弐拾dB藤井と訪れた喫茶ファイン。 地下へ続く階段を降りると、ドアのガラス越しに何処かで見たような眼鏡の青年。 全く知らない人だった。 ソファに座り、アイス珈琲を注文する。 着いて早々、テーブルの上に楽譜や本を並べる。野暮だ。アイス珈琲を決めながら、セットリストをつめる

          品品喫茶譚 第101回『神戸 元町ファイン 花森書林で歌うのこと』

          品品喫茶譚 第100回『東京 国分寺ほんやら洞 鷹の台アドバルーン商会・サイコロ展最終日に滑りこむのこと』

          二週間前、わたしゃ、東京にいた。 この日は鷹の台という街にあるアドバルーン商会で催されていたサイコロのグループ展の最終日であった。サイコロは私も同人として参加させていただいている同人誌である。五月に高円寺でポンチ絵展などと言って、二週間もかまさせてもらった反動で、今回の展示には不参加だったのだが、色々なタイミングが重なって、なんとか最終日に挨拶に伺うことができた。 さて、会場に向かう前、喫茶店を決めようと思った。ちょうど乗り換え駅であった国分寺で、ほんやら洞へ。京都のほんやら

          品品喫茶譚 第100回『東京 国分寺ほんやら洞 鷹の台アドバルーン商会・サイコロ展最終日に滑りこむのこと』

          品品喫茶譚 第99回『栃木 宇都宮 パーラー&喫茶BC 宇都宮パルコの、残骸』

          翌日、弘前を去る前に中三というデパートの地下にある中みそに寄ろうと思った。 シソンヌじろう氏の本によると中みそは弘前市民のソウルフードのラーメンなのだそうで、これは是非食うてみたいと思うた。 10時の開店に合わせ、入り口前に陣取る。初めて訪れた街のデパートに開店から並ぶのはちょっとどうなのかとも思ったが、スケジューリングの都合上、どうしようもない。私の他には老婆がひとり。無言で待つ。扉があく。いらっしゃいませの嵐が吹く。地下へ続く階段を降りる。 地下は主にフードコートと食品売

          品品喫茶譚 第99回『栃木 宇都宮 パーラー&喫茶BC 宇都宮パルコの、残骸』

          品品喫茶譚 第98回『青森 弘前ルビアン 土手町ストリート』

          昼前に仙台駅を出て、足は実家のある南ではなく、北へ向かう。 弘前へ行こうと急に思い立ったのである。 思い立ったからといってすぐにふらふらと、ほへー北へ向かおう、向かっちゃおうー、あはは楽しー。なんてことが簡単に許されるはずがない。 はずがないのだが、今回の私のスケジューリングでは可能だったのである。 こんなタイミングでもなければ、今後しばらく行けない気がする。 私はほへー、弘前に向かおう、弘前に向かっちゃおうー、あはは楽しー。と新幹線と特急を乗り継ぐこと一時間半くらい。弘前駅

          品品喫茶譚 第98回『青森 弘前ルビアン 土手町ストリート』

          品品喫茶譚 第97回『仙台 エルベ 道玄坂再訪 銀杏BOYZと友部正人の夜』

          先日、仙台に銀杏BOYZと友部正人さんのライブを観に行った。 日光の実家がなくなってから、大学生くらいの頃、つまり己が実際にステージに立つまでに夢中になった音楽が急に自分に帰ってきた。帰ってきた、というのは、もちろん彼らの音楽はいつも自分の中心にあるのだけども、改めて向き合いたい、観たい、何かを感じたい、と思ったのである。 一、二年前、両親と昔から家族に縁のある定義山を訪れた際に帰りに仙台で喫茶店数店舗に寄った以来。 いま新しい実家のある宇都宮からは新幹線で一時間くらい。 ま

          品品喫茶譚 第97回『仙台 エルベ 道玄坂再訪 銀杏BOYZと友部正人の夜』

          品品喫茶譚 第96回『京都 喫茶フィガロ』

          喫茶フィガロはたまに通る道沿いにある。 以前訪れたときから代がわりし、いまは若い人たちが店を営んでいるらしい。 店に入るとかなりの盛況ぶり。奥のテーブルに向かう。 席にはここ冷房めっちゃ来ますよ的なことが書かれている。 喫茶店に長居する人間あるあるのひとつに、段々冷房が身体にこたえてくる、というのがある。かどうかは分からないが、私にはあり、はるか昔、今以上に未熟だった折りには、あるチェーン店に無駄に入り浸っては、段々寒くなるその席に、身体をぶるぶる震わせ、唇は紫色、は言い過ぎ

          品品喫茶譚 第96回『京都 喫茶フィガロ』

          品品喫茶譚 第95回『東京 高円寺ごん ピンポン、初の個展をするのこと』

          5月8日。 午後早く高円寺に着き、ポンチ絵の展示をして下さることになっている本の長屋へ向かう。 数年前、戯れにネットにあげた文士絵が一部で異様な人気を博したことによる布石がここにきてやってきた。フォークシンガーによる、へにゃついたポンチ絵展が実現することになった。 さて、初めての展示である。早速、会場設営のやり方がわからず、壁を前に途方に暮れる。 前日に絵描きである彼女に色々お膳立てしてもらい、レクチャーを受け、簡単最低限のノウハウを教わったにも関わらず、壁を前に立ち尽くす。

          品品喫茶譚 第95回『東京 高円寺ごん ピンポン、初の個展をするのこと』

          品品喫茶譚 第94回『尾道 そごう 喫茶部あくび 凡夜READING CLUB 尾道に登場するのこと』

          連休初日ということもあって、人手を少し警戒していたものの、尾道駅はそこまでではなく、ましてや商店街とは反対の方角に在する宿の周りは至極穏やかなものであった。 チェックインまでには今しばらく時間があるので、ギターケースを預け、そごうで昼をすませることにした。 時刻は14時過ぎ。昼飯時のピークを越え、店は凪の時間を迎えていた。店内には私のほかにお客はひとり。スピーカーからは、ましゃ、いや福山雅治のラジオが延々かかっている。 カレーを注文する。 そごうのソファは私のマイベストフェイ

          品品喫茶譚 第94回『尾道 そごう 喫茶部あくび 凡夜READING CLUB 尾道に登場するのこと』

          品品喫茶譚 第93回『姫路 大陸 木山捷平展でシングするのこと』

          朝早く姫路に着いたので、大陸でモーニングを決めることにした。 私は大抵、細長く奥まった店内の一等手前、入り口からすぐの席に座ることが多く、このときもその席をチョイスした。 以前、文学フリマ東京で私のブースに寄って下さったお客さんから、この店をテーマに作った『大陸』(そのままである)という曲をお店の方が知って下さっている、という情報を得ていたため、今日はギターも担いできたし、髪型も昔からの私のトレードマークじみたおかっぱにかなり戻ってきているし、なんならこれから姫路文学館でギグ

          品品喫茶譚 第93回『姫路 大陸 木山捷平展でシングするのこと』