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品品喫茶譚 第112回『京都 六曜社 森島、ねじ、さとう、品品』

もうだいぶ前のことだから、記憶が大変おぼろであるが、あれは森島慎之助氏のレコ発ライブの翌日だった。

その前日、つまりライブ当日(ややこしい!)。
ライブが終わり、私は共演の森島、水野ねじとまるで馬鹿のような顔をして、夜道を歩いていた。リビングデッドのようにぬらぬらと打ち上げの場所を探し、徘徊していたのである。
ふいに目の前に喫茶店みたいなスナックみたいな店が現れる。
森島がすかさず店内を覗きこみ一言。
いけそうですよ! 
却下して、歩き出す。
さらに進むと目の前に小料理屋のような店が現れる。
森島がすかさず扉を開けて様子を聞く。
ラストオーダーが近い。
いけそうですよ!
却下して、歩き出す。
そのうち我々はいつのまにか坂道を下っておった。
目の前にふいに赤提灯が現れた。
扉はあけ放たれており、先程ライブに来ていた森島の同級生たちが酒盛りしているのが見えた。
ここにしましょう! 
しょうがない。
私とねじは渋々入った。
先程はありがとうございました。などと、森島の同級生たちと型通りの挨拶をかましていると、中からまるで蒙古タンメンの創業者みたいな風情の店長が出てきて、ごく常識的に挨拶を交わしていた我々に対し、
「うちはあまり騒ぐような店じゃないんですけど、大丈夫ですか」
みたいな発言で牽制してきた。どう見てもあちゃらかぱっぱな学生とかが騒ぎそうな飲み屋に見えたが、口ごたえはしない。
もとより私たちは馬鹿騒ぎをするようなタイプではないのである。
至極、真面目に三人で飲み始める。
ほらどうだ。騒いでないだろう。
ドキドキしながらくっちゃべった。
途中から同窓会じみた森島と半々に別れ、ねじと二人で飲む。あんまり覚えていないが相当笑ったようだ。写真が残っているのでどうやらそうらしい。
私の注文したフライドポテトは来なかった。

そんな打ち上げの合間に私は京都在住のシンガー・さとうじゅん君に連絡していたらしい。というのも森島とさとう君がそもそもこの日のライブ後に合流しましょう的な話をしていたっぽいのだ。そこになぜか私が出てきて、さとう君(以降、さとう)にDMしていたらしい。
全くおそろしいことだ。
流石に日付が変わっており、さとうがどこに住んでいるのかは知らないが、左京区まで呼び出すのは酷なことだったようだ。
翌日、午前中に六曜社で茶をしばこうということになった。

ねじを爆笑させる著者(右)

私は最近目覚めがよい。しこたま飲んだとて、割合すっきりと目覚めることができる。
ま、5分前くらいには着くか、と踏んだ市バスが思いのほか早く着いてしまい、10分前、これは六曜社の開店時間までの10分前ということになる。開店を待って前のめりで並んでいる人みたくなってしまった。
しかも件の三人は恐らく私よりも近いところに在していながら、全くやってこない。
私は待ち合わせに遅れるのは嫌だが、待たされるのはもっと嫌なのだ。自分が一番年長であるというよくわからないプライドも一瞬頭をもたげ、とても恥ずかしかった。
何人かの旅行客が店の前で立ち止まり、様子をうかがっていく。
まだっすよ。
はあ。
私は開店待ちのよくわからない不審なちょぼヒゲであり、みな一様に胡乱な様子で一瞥して去っていく。
寂しかった。
早く来い。
しかし連中は来ない。
やがて六曜社のマスター・オクノ修さんが自転車で颯爽と現れた。
数分後くらいに、もさくさした足取りで森島とねじが現れる。
ねたましかった。
何よりホッとした。
一番奥の席に通され、何をしゃべったのか、途中からさとうが合流し、一時間ほどぺちゃくちゃおしゃべりした。楽しい時間だった。
森島と別れ、ねじとさとうと飲みに行く。背徳の昼酒である(この日は休日であった)。
案の定、したたか酔って、もにゃむにゃ街を歩いて帰った。

後日、六曜社を出たところで、森島氏が撮影した私とさとうとねじの写真が送られてきた。
いかにも京都にいそうなバンドみたいだった。

楽しい時間をどうもありがとう。

吉田寮とかに出ていそうなバンド。



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