品品喫茶譚 第100回『東京 国分寺ほんやら洞 鷹の台アドバルーン商会・サイコロ展最終日に滑りこむのこと』
二週間前、わたしゃ、東京にいた。
この日は鷹の台という街にあるアドバルーン商会で催されていたサイコロのグループ展の最終日であった。サイコロは私も同人として参加させていただいている同人誌である。五月に高円寺でポンチ絵展などと言って、二週間もかまさせてもらった反動で、今回の展示には不参加だったのだが、色々なタイミングが重なって、なんとか最終日に挨拶に伺うことができた。
さて、会場に向かう前、喫茶店を決めようと思った。ちょうど乗り換え駅であった国分寺で、ほんやら洞へ。京都のほんやら洞は火事で燃えてしまったが、私は一度だけライブをさせてもらったことがある。
国分寺のほんやら洞はカレーが有名である。ちょうど昼時だったこともあり、店は繁盛しており、みなカレーを食している。
私も当然、カレーである。と、なれば良かったのに、宿のある高円寺を出る際、あろうことか吉野家にて牛丼に生卵をぶっかけ、浅ましいほどの量の紅しょうがをトッピングし、かっこんだ挙句、馬鹿の態で水をがぶ飲みしてきていたのだ。つまり腹はパンパンのパン。当然、カレーは頼めず、またかと思われるかもしれないが、結局アイス珈琲を注文した。毎週読んでくれている方は気づくだろう。こいつはアイス珈琲しか飲んでいない。いやあ暑いもんね。とにかく今日もまたアイス珈琲ちゅーちゅーしながら、一番入口側のテーブル席に陣取ったのである。
国分寺のほんやら洞といえばフォーク。亡くなられてしまったが中山ラビさんの店である。何かこういてもたってもおられなくなり、Twitterで、ほんやら洞を検索するほど、浮き足だっていた。
果たして「俺はほんやら洞で昔、友部正人さんとベロンベロンになるまで飲んだ」などという、どこかのおっさんのツイートを見つけ、やはりここはフォーク。と嬉しくなったりした。
小雨が降っている。
鷹の台につき、アドバルーン商会に入ると、山川直人さんをはじめ保光さん、ムライさん、小沼さん、長田さんたち、今回、サイコロ展に参加した同人の皆様が揃い踏みだった。
山川さんと保光さんは旧知の仲だが、他の皆様に会うのは初めて。山川さんに紹介していただき、へらへら俯きながらご挨拶する。お客さんがひっきりなしに訪れるギャラリーの中を幽霊のようにふらふらし、明らかに居座りすぎだろうと思われるタイミングで、いとまを告げると、山川さんから「打ち上げ行きませんか?」と嬉しいお誘い。へらへら参加を表明する。搬出などがあるみなさんを待つ二時間ほどの間、教えていただいたシントン、KIKIRECORD、喫茶店とカフェをハシゴする。
シントンは落ち着いた街の喫茶店。窓から見える線路、歩く美大生たち。素敵だった。
KIKIRECORDでは、上村一夫本人が歌唱するレコードを発見し、購った。宇野亜喜良のコースターがカッコいい良い店だった。レコードもむっさ売っていた。
今回の東京滞在中、ふらっと入った店で探していたCDやレコードを発見する機会が本当に多かった。何かを掴みかけているんじゃないか。
さて大体、これくらいの時間にまたアドバルーン商会に来てください、という時間のちょい前くらいにKIKIRECORDを出てふらふら歩いていると、遠くに早足で駅の方へ向かう山川さんを見つける。急いで通りに出て合流すると、なんと山川さんは私を探しに行ってくれていたのだった。
山川さんは優しく傘に入れて下さった。
小雨が降っている。
打ち上げはシントン近くのいい感じの飲み屋だった。実はみなさんの搬出作業を待つ間、佇まいに惹かれ、件の酒場で一杯かまそうとしたのだが、店に入りかけた瞬間、何かこう野生の勘が働いた。
つまり、今日の打ち上げはここであろう。
そう思ったのである。
果たして私の勘は正しかった。だから何だと言われても困る。
打ち上げは本当に楽しかった。皆さんと距離を近づけられたかは分からないが、ひたすらでかいジョッキでビールをしこたまあおった挙句、終わり際になってアドバルーン商会店主に勧められた日本酒を店主と小沼さんと三人、ぐいっと決めた。
気さくな母ちゃんの店。
閉店間際までいて、店を出る。最後、母ちゃんが「音楽頑張ってね」と声をかけてくれた。
これで頑張らなきゃ嘘だろう。
玉川上水がさやさや流れている。
東京を離れて、東京をどんどん好きになる。
明日は都知事選。
遠くの街から明るい結果を期待しています。