品品喫茶譚 第104回『ピンポン喫茶淡』
こんなの書いてなんか意味があるのかい。
ずいぶん続けているようだけど、本当によくやるよ。
毎週、毎週、己の話ばかりで、君はどれだけ自分が好きなのかね。
他にもっと考えなくちゃならないことが沢山あるんではないかい。
さっきからアイス珈琲ちゅうちゅう吸って。
なるほど。そうやって阿呆面さげて、いつもちゅうちゅうやっているわけだ。
嫌にならないかい?
あ、店員さん、おかわりください。
ふむ。しかしまあ、いつもいつも同じことばかりしていて飽きないってのもある意味才能なのかね。あ、これ全然ほめてないよ。
いつでも初めてみたいな顔して喫茶店に入って、ひとりでにやにやして。ああいやらしい。
一体、君に喫茶店の何がわかるというのかね。
私ほどの男がいまだに喫茶店のなんたるかもつかめていないというのに。
うん?
あ、君、何している!
フレッシュは石油なんだよ!
決して不用意にかけてはいけない!
健康に気を遣いなよ。
甘くしたいならさ、俺が持ってきたハチミツがあるから、これを好きなだけかけなよ。
な、俺の言うこと聞いてくれたらばあちゃん長生きできるよ。間違いねえんだからよ。
「ぐだぐだうるさいよ。どうせ大して変わらないよ。私は好きなように飲むよ」
私に説教していたはずの紳士の声は、いつのまにか後ろの席の老婆とおっさんの会話にとって変わられている。
二杯目のアイス珈琲をお願いし、パソコンを開く。
文章を書き、小説を書き、歌を書き、たまにへそをかきながら窓の外を見る。
生活をもっと、人間をもっと、掴みたいな。
掴んで、掴んで、ぶん投げて、そこから生まれる表現を自分だけのものにする。
フレッシュは石油なのか、ハチミツはいくら入れてもいいのか、こんなに喫茶店にばかり来ていていいのか、へこたれてばかりいていいのか。
大文字山に火が灯る。
ハートに火をつけて。
カメムシが頓死している。
セミは鳴いている。
夏が早足になる。
段々歩を早める。
まだまだ全然足りないんだよ。