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疏水…

 鬱屈とした梅雨の晴れ間に、私は電車を降り川沿いを歩いていた。
 京阪の七条駅から少し南へ進んだ所にある塩小路橋の下から、疏水は再び地上に現れるのだ。
 大雨の後だからであろう。水の流れはいつもより勢いを増しているはずである。

 『このままこの流れに乗れば大阪までは瞬く間に辿り着けるであろう…』

 ふと水流に潜む魔物の言葉を聞いたような気がした。
 この水量は危険だ…
 生半可な気持ちでは心を奪われてしまうことは明白であった。

 琵琶湖疏水は中書島で宇治川と合流し、山崎辺りでは木津川、桂川と合流して淀川となる。明治より加わった流れの行き着く先は大阪湾である。
 「右岸」と「左岸」は川の流れを下る舟からの視点、「右京」と「左京」は大内裏から南を向いて政治を行う思想からつけられた地名。

 ストリートビューも南面して見がちなのは、京都あるあるなのであろうか?いや、ないないであろう…
 川の気持ちになる日本人の感性はやはり少し面白いのかもしれない。

※このコメントは実際の地理を元にしたフィクションです。 

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