フラクタル 4
なんの進捗もないまま季節は秋に向かっている。夢みがちな日々は続いている。時々夢の中で私は、森を彷徨っていることが多いことに気が付いた。
『見えている世界と思いの世界は違う。』
明らかなメッセージだ。思考の中にようやく残るようになった夢の中で、私は何者かと語らっている。土偶のような存在だ。浮遊する土偶。これは愉快だ。本来なら崇拝するところなのかも知れないが、私は彼と追いかけっこをしている。
無機的なザラついた質感の骨格。人工物なのか違うのか。私の興味は夢の中で、彼を形成する物質に集中していた。触れたいという欲求は日々高まり、毎朝運動後のような汗で目覚める日々がしばらく続いている。
昆虫のようではある。浮遊して動く昆虫。知性を持った昆虫。目が覚めてからしばらくは彼との対話というのであろうか。さまざまな何の脈絡もない映像が私の脳内にイメージとして流れてくる。
全くと言っていい程脈絡がない。取り分け視力が冴えているその世界では何の情報も得られることがないまま、私は再び対戦の機会を得ることができた。
クリアな視界に銀色の髪のターゲットが蠢いているではないか。私はすぐさま武器を手に取ってターゲットの背後に近付いていく。
近づくと言っても視界が冴えてきるだけであって距離にすると今までは姿形すら捉えることのできない程の遠距離だ。
これならいけるのか?ロックオン…ファイア…
勝負あった。ようやく私は銀髪のターゲットを制覇する事に成功したはずだ。
拘束されているという前提を無視した解釈ではあるが確かに私は以前とは違う方法でターゲットを捉えることができていたはずだ。
『スコア2000』
ゴーグルに表示が出た。ああなるほど、これは単なるシュミレーション。2000が低いのか高いのかすら分からない。私は闘いのために養成されている囚われの兵士だというのであろうか?