日本フードエコロジーセンターへ視察してきました
『食品ロス』に、新たな価値を。日本フードエコロジーセンターの持続可能なビジネスとは?
◎日本フードエコロジーセンターってどんな会社?
神奈川県相模原市にある「日本フードエコロジーセンター」は、ただの廃棄物処分業を営む工場ではありません。
何と、以下に掲げた目標に貢献するSDGs先進企業なのです!
日本フードエコロジーセンターは、「食品ロスに新たな価値を」という企業理念の下、食品廃棄物を有効活用してリキッド発酵飼料(液体状の飼料)を製造し、養豚農家における安心・安全でおいしい豚の育成に役立てています。このように廃棄物処理業と飼料製造業の2つの側面を持つ新たなビジネスモデルが特に評価され、第2回ジャパンSDGsアワード「SDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞」に輝いています。
今回私たち環境サポーターは、日本が世界に誇るSDGs先進企業の日本フードエコロジーセンターを訪れました。
◎日本の食品ロスの現状
施設見学をする前にまず株式会社日本フードエコロジーセンター事業部の高原さんが日本の食品廃棄の実態について授業をしてくださいました。
日本では1日に約5万トンもの食品が廃棄されています。これは25メートルプール100杯分に相当し、年間では約1900万トンが廃棄されています。そのうち約4分の1である472万トンはまだ食べられるにもかかわらず捨てられているのです。
このような環境問題や食糧問題に触れると「意識が高い話だ」と感じる方もいるかもしれません。しかし、食品ロスの問題は私たちの生活に密接に関わっている問題です。例えば、毎日廃棄される5万トンの食料は、各自治体の焼却炉で処分されることが多いですが、焼却炉で処理されるごみ全体のうち約4〜5割は廃棄された食品、つまり生ごみです。年間で約8000億〜1兆円もの税金が生ごみの焼却に使われている計算となり、この費用は私たちが払っている税金によって賄われているのです。
もしこうした生ごみの削減が進めば、その分の予算を社会保障やインフラ整備など、私たちの生活を直接支える分野に振り分けることが可能になります。授業を通じて、この問題が決して他人事ではなく、私たちの日常生活に直結していることが改めて実感できました。
◎食料自給率と持続可能な食糧供給
さらに、日本の食料自給率の低さも大きな課題として取り上げられました。日本の食料自給率は約37%、家畜用飼料の自給率に至っては約25%とかなり低い水準であることが分かります。卵や豚肉、鶏肉といった食品が国内で十分に供給されているように感じるかもしれませんが、海外で伝染病や国際紛争などのリスクが発生すると、その供給は必ずしも安定的であるとは言えません。また、海外から飼料や食料を輸入するには多大な費用がかかり、輸送時には大量の二酸化炭素が排出されてしまう問題もあります。
◎日本フードエコロジーセンターの解決策
こうした中で、日本フードエコロジーセンターは、余った食べ物をリサイクルし、豚の飼料として再利用するエコフィードの生産に取り組んでいます。これにより、コンビニやスーパーが廃棄するはずだった食料を資源として活用することができ、廃棄処理にかかる費用を削減しています。また、焼却にかかる税金の負担が軽減されるだけでなく、国内の畜産農家は高価な輸入飼料を購入せずに済むため、持続可能な食料生産の循環を生み出しています。
ここからは、実際に施設見学して撮った写真も踏まえて、日本フードエコロジーセンターの取組を紹介していきます。
◎余ってしまった食べ物を豚さんのエサにリサイクル!
日本フードエコロジーセンターは、180以上の事業所から、食品廃棄物を食品循環資源として毎日最大49トン受け入れ、リキッド発酵飼料を製造しています。
以下の画像が作業の様子です。まだまだ食べられそうなものばかりで、もったいない!
ちなみに、リキッド発酵飼料によって育てられたブランド豚肉は『優とん』といいます。オレイン酸が多く含まれヘルシーだそうです。
◎リキッド発酵飼料のココがすごい!
① 安い!
本来、食べ物は水気があって燃やすのにはコストがかかる。リキッド発酵飼料は、従来の乾燥された飼料と異なり、食品の水分をそのまま利用しているのでエネルギーコストが下がり、一般配合飼料の半分程度の価格で提供が可能となっています。
② 日持ちする!
通常、液体状であると乾燥させたものよりも腐敗しやすい。そこで、腐敗を防ぐために研究をし、日本に存在する『発酵』という技術を利用して完成したのがリキッド発酵飼料。
③ 体にやさしい!
発酵により、腸内環境の改善が期待できる。また、液体状であることから粉塵が発生しないため、肺炎等の疾病率が低下し、抗生物質の投与を軽減できます。そのため、安全で健康的な豚肉を消費者に提供できます。
◎なぜ豚なのか?
豚は人間の食べられるものであれば何でも食べられるから!
鳥だと、くちばしで液体状のエサは食べることが難しい一方で、豚は液体状でも難なく食べられます。
牛だと、液体状のエサは食べられるが、狂牛病を発症する危険性があることから、牛のエサに動物性たんぱく質を入れることが法律により禁止されています。
◎無駄なものは一切ない!
日本フードエコロジーセンターは、食糧廃棄物を飼料化し、飼料化に適さないものはバイオ発電させ、それでも残ったものは肥料化しています。そのため、ほとんど廃棄するものがありません。
以上のように、日本フードエコロジーセンターではいくつもの段階でリサイクルを行い、食品ロス削減をはじめとしたSDGs達成に貢献しています。
一方で、日本フードエコロジーセンターが受け入れる食品廃棄物は、食品工場の製造ロスや、スーパー・コンビニなどの小売店で発生する売れ残りです。つまり、家庭から出る生ごみや飲食店から出る食べ残しなどは一切使われていません。これは、家庭ゴミには食品以外もゴミとして含まれているからです。上述した通り、家庭から出る食品ロスと事業活動から出る食品ロスはほぼ同量で年間236万トンです。そのため、食品ロス対策は、消費者・事業者双方の協力が欠かせません。そして、消費者の及ぼす影響は比較的大きいといえます。
皆さん!食べ残ししていませんか?
必要ないのにたくさん買いすぎていませんか?
まだ食べられるのに形や色が悪いからって捨ててしまっていませんか?
無駄なところは私たちが思っている以上に少ないです。
◎私たちにできることは何だろう?
今まで、食品ロスについて聞いたり、考えたりすることはあったかもしれません。ここで一歩進んで、食品ロス削減について、できることからひとつずつ実際に始めてみてはいかがでしょう。
食品ロス削減への取り組みを知識としてインプットするだけではなく、実際に食品ロス削減に取り組む企業を訪れることで得られる気づきや学びがあると思います。ひいては社会で実際に起きている問題を自分事として考えるきっかけにもしてほしいです。
(環境サポーター ひろや・ごえもん)
「日本フードエコロジーセンター」では、団体や一般の方の工場見学を受けれています。詳細は日本フードエコロジーセンター(https://japan-fec.co.jp/factory/)へ。