やるかやられるかの世界を生きる~統合失調症である私のサバイバル術その㉙~夜明け前
前回まで
精神疾患の当事者であるという経験も支援に活かしていきたいと当初考えていた私でしたが、精神保健福祉士として支援の仕事を続けていくにつれ、その思いは小さくなっていきました。
もっと言えば「自分の中の精神疾患はなかったものにしたい」、といったような精神疾患に対する内なる偏見を抱くようにもなっていきます。
やるかやられるかの世界を生きる~統合失調症である私のサバイバル術その㉘~「こちら側」、「あちら側」|せっと|note
そんな私の考えにパラダイムシフトを起こすような出会いがありました。
今回はその出来事についてお話ししていこうと思います。
出会い
自分の中にパラダイムシフトを起こすようなできごと、それは今の妻との出会いでした。
彼女は精神疾患の経験もありながら精神保健福祉士としてそのことをオープンにして働いているという方でした。
彼女の存在、自分のほかに精神疾患を抱えながら精神保健福祉士として働いている方がいた、しかも自分とは違って(病気のことを)オープンで働いている、ということに興味を持ち、交流が始まります。
今まで出会ってきた精神保健福祉士の方々とは違う彼女の目線、働き方は自分にはとても新鮮に映り、次第に自分の中で小さくなってしまっていた初期の感覚、精神疾患の当事者性も支援に活かしたいといった思いを思い出させてくれる感じを受けはじめました。
休眠状態にあった自分の心のエンジンが少しずつ動き出しそうな兆しを表し始めています。
そんなこともあり彼女も登壇するというリカバリー全国フォーラムという集いにも初めて参加してみます。
「なんだ、この空間は・・・?」
初参加した池袋の大学の会場で、ひどく心を揺さぶられ、ざわざわしたのをよく覚えています。
会場に参加しているのは多くが精神疾患の当事者の方々。
みんなとてもまぶしくキラキラしている、そして会場全体もすごく活気にあふれていました。
みんな自分に正直に生きていて、精神疾患があったとしてもそれを隠すことなく堂々と生きている・・・そんな姿を目の当たりにし、自分はどうなんだろう、といったことを考えてしまいました。
自分の障がいや病気を隠すべきもの、恥ずべきもの、なんて考えていた自分に気づいて、自分の中にあった精神疾患に対する偏見に気づき、そんな自分のことが恥ずかしくなってしまいました。
「自分もこの会場のみんなみたいに自分に正直に生きたい、病気や障がいがあったとしても自分らしく自由に生きていきたい」なんてことを考え始めるきっかけになりました。
ピアスタッフという働き方
また、リカバリー全国フォーラムの分科会で、病気の経験を活かしながら支援の仕事に就くピアスタッフという方々の存在を知り、実際にその働きについて触れることができたのも自分にとっては大きかったですね。
精神疾患当事者であっても支援の仕事に就いている人がいるんだ、それって自分が当初めざしていた働き方だよな、なんて忘れかけていたことを思い出させてくれました。
根拠なく、まったくの思い付きであった精神疾患の経験も支援に活かせるかもしれない、という自分の考えが案外的外れではなかった、ということを確認することができた思いでもありました。
そしてそのような働き方をしているピアスタッフといわれる方々が全国に存在しているということを知ったことで、自分の目指す道、働き方はこれかもしれない、というか、そもそも最初からこれだったんだ、ということに改めて気づき、そこに大きな希望を感じます。
今回はここまで。今の妻との出会い、リカバリー全国フォーラムへの参加を通して自分の心のエンジンが再始動に向けてアイドリング状態になりました。
そして進む道もぼんやりと見えてきた感じです。
燃料を補給し、出発に備えて準備をしていきます。