やるかやられるかの世界を生きる~統合失調症である私のサバイバル術その㉜~行き止まり

前回まで

自分の中にパラダイムシフトが起きるきっかけとなった今の妻との出会い、交流を重ねる中でのエピソードについて、2回に分けてお話ししました。
それは私にとってピアサポートを実際に感じることができた体験でした。
やるかやられるかの世界を生きる~統合失調症である私のサバイバル術その㉚~邂逅①|せっと|note
やるかやられるかの世界を生きる~統合失調症である私のサバイバル術その㉛~邂逅②|せっと|note
今回は、ピアサポートを体験した私のその後の働き方がどのように変わっていったかについてお話ししていこうと思います。

職場が灰色に


ピアサポートを体感することができたことで、それ以降私のリカバリーも一気に進んでいきました。
と同時に、今までの自分の仕事の仕方や仕事に向き合う時の考え方のようなものに変化が生じてきます。
精神保健福祉士であることに強く抱いていた自分自身のアイデンティティに揺らぎが生じはじめ、自分は専門職である前に精神疾患当事者であったのではないか、当初はむしろそこにこそ自分のアイデンティティを抱いていたのではないか、といったことを思い出しました。

「自分も自身の当事者経験を活かして働きたい」、「障がいや病気の経験もオープンにして働きたい」、なんて思うようになり、転職も視野に入れるようになります。

スティグマに気づいて


と同時にそんなマインドに自分がなってきたこともあって、職場でのほかの職員のふるまいやメンバーさんに対するかかわりに違和感を抱くようになることも多くなってきました。
職場のスタッフルームでは、調子が悪くなったメンバーさんに対して

「あの人は○○障害だから」、とか

「幻聴が聞こえているんだよ」、

「妄想があるね」、

「薬きちんと飲んでいるかしら?」、といった会話がなされる。

「○○さんはあの作業しかできないから」等々の発言・・・

今まで気にならなくなっていた、というよりむしろいままでは自分も加わっていたであろうそのような会話に強烈に違和感を覚えるようになり始めました。
「自分も精神障がい者、もし自分が支援を受ける立場であったならこのように言われてしまっていたのだろう」、みたいにおもえて嫌な気分になることもありました。

ただ、職場でそのように感じていたのは自分だけ、次第に周囲の同僚とのずれを感じるようになり、そのことで自分が周りから浮いている、変な奴だと思われていると感じるようになっていきます。
キラキラに思えていた職場の光景が今までとは違って見えるようになり、職場にいるのがつらくなりました。

「自分はこんなことがしたかったのか」、「もっと違う仕事の仕方があるのではないか」・・・そんな気持ちが日に日に強くなっていきます。
そんな状態であったので周りの職員との間に溝を感じるようになり関係がぎくしゃくしはじめます。

溢れるコップの水


おそらく自分の同僚たちに対する見方が変わってしまい、「仲間」のように思えなくなってきたため、彼らからも疎ましがられているような、よそよそしく思われているような感じを抱くようになっていったのでしょうね。
もはや大部分の同僚たちと、かつてのように一緒に何かに取り組む、というような気持ちにはなれなくなっていました。
そのためそのような職場で仕事を続けていくことに対するモチベーションも保てなくなるのはいってみれば当然のことでした。

またこのころプライベートでも大きな生活の変化に直面しており、そのことも影響して毎日が不安の中であり、またかつての具合が悪くなってきたときと同じような状態、誰かに攻撃されているような感じや、なにか大きな力が働いて自分を陥れようとしているように感じ始めます。

毎日の生活に過度に疲弊し消耗していた状態のなか、ある時お酒と一緒に手持ちの精神薬を大量に服薬します。
朦朧となっていたところ、おそらく無意識にだと思うのですが母親に電話をかけており、異変に気付いた母親がマンションまで駆けつけ実家に運ばれました。
このことがきっかけで会社を休職するに至ります。

2か月ぐらいで復職するのですが、復職しても自分の中で大きくなりつつあった違和感におりあいをつけてこの職場で働き続けることはもはや不可能に近いものでした。逃げるようにして8年余り務めた職場を退職します。

終焉


この職場で学べたことや成し遂げたこともかなりたくさんあったように思います。
そのことで周囲から感謝されたり、褒められたりもしました。自分でも結構職場の中心となって働けていたように思っていましたし、周りからもそのように見なされていたところもあったかと思います。

迎えた勤務最終日。いつも通り業務を終え、最後のタイムカードを打刻するときにはその日出勤していたほとんどの同僚はすでに退勤した後。
最後まで親しくしてくださったわずかに残る2,3人の同僚からねぎらいの言葉をいただけただけの寂しい終わりでした。

今回はここまで。書いていてつらくなりました。このころ在籍していた職場に成長させてもらえたとは今でも思っておりますし、感謝もしています。
ただ当時の同僚の中にどうしても許せない方々がいたり、納得がいかない当時体験したエピソードがあったりするのも事実であり、そのことはいまだに完全には消化できないでいます。
たまに夢にまで当時のことが出てくることもいまだにあり、もしかしたらトラウマ的に自分の中に残っているのかもしれません。

仕事を辞めたはいいが次を決めずに辞めてしまった私です。
この後私がどのように再度リカバリーの道を歩み始めるのか、それは次回以降でお話ししていきます。

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