見出し画像

#25 特別支援学校高等部(知的)の入試問題を比較してみる

 令和7年1月13日 加筆修正
 タイトルの通り、今回は6自治体の教育委員会に公開される入試問題から、特別支援学校高等部において求められる能力を分析します。
(内容に関しては基本的に知的障害特別支援学校高等部になります)
 また、本記事は以下の記事にある入試問題について、掘り下げた内容となります。

 なお、結論から書くと
・問われる問題は基本的に「認知能力」、「生活能力」、「基本的読み書き計算能力」の3点
・出題範囲は自治体によって、やや差が見られる


1 東京都

 東京都では、特別支援教育の普通教育を施す「普通科」の他に、職業教育を専門とする「就業技術科」「職能開発科」があります。
この職業教育を専門とする科の入試問題は「適性検査」として公開がされています。
 以下は検査内容になります。

適性検査問題1ー1
適性検査問題1ー2
適性検査問題1-3
適性検査問題2
(リンク先は令和6年度の入試問題になります)

 適性検査は上記4つから構成されていますが、年度によって問題の傾向が異なるものの、1ー1は基本的な読み書き計算、1-2は認知能力や生活経験、1ー3は作業能力、2では作文能力が求められています。

2 大阪府

 大阪府でも東京都と同様に「普通科」の他に、「職業学科」と呼ばれる職業教育を専門とする学科で適性検査があります。
東京都とは異なる点としては、問題が「筆答問題」「作業問題」の2つにまとまっていることが挙げられます。
筆答問題は、大問1〜4が基本的な読み書き計算、大問5〜9が認知能力や生活経験、大問10で作文能力が求められています。
作業問題は、東京都の問題と同様で作業能力が求められていることが確認できます。
 東京都と大阪府の適性検査は、出題内容が似ているように思います。

3 広島県

 広島県は、「普通科」を基本とした上で「普通科に係る知的障害のみ」と「普通科職業コース」の2つに分かれており、それぞれ入試問題が公開されています。
 令和5年度までは教科別で検査問題が出されていましたが、令和6年度の問題では、検査が「検査A」と「検査B」という形式に変更され、総合的には前年度と近い内容ですが、傾向が変わっています。
なお、「検査A」については、基本的な読み書き、聞き取りに関する問題で、内容は以下のようになっています。

英語による放送を聞き、その内容を正しく理解しているかを問うもの
2 公共交通機関の放送を聞き、その内容を正しく理解しているかを問うもの
3 実生活で見かける標識や表示について理解しているか、また、職業生活で起こり得る事象に対応で きるかを問うもの
4 作物の栽培や、作物の収穫、販売で用いる計算について理解しているかを問うもの
5 折れ線グラフの読み取り等の知識を活用することができるかを問うもの
6 作文の内容や情景、場面の様子を読み取ることができるかを問うもの
7 文章中の語句について、漢字や片仮名で正しく書くことができるかを問うもの
8 食品に主に含まれる栄養素の体内の働きについて問うもの

広島県教育委員会ホームページ 令和6年度広島県立特別支援学校高等部入学者選抜
「検査A」より抜粋
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/581151.pdf

 「検査B」については、認知能力を問う問題で、内容は以下のようになっています。

1 手指の巧緻性、持続性について把握するもの
2 必要な視覚情報への注目について把握するもの
3 必要な視覚情報への注目について把握するもの
4 他者の視点の理解について把握するもの
5 空間認知について把握するもの
6 必要な視覚情報への注目について把握するもの
7 他者の感情の理解について把握するもの
8 相手の状況に応じたコミュニケーションについて把握するもの
9 情報の収集・把握・処理について把握するもの
10 情報の収集・把握・処理について把握するもの
11 意思の表出について把握するもの

広島県教育委員会ホームページ 令和6年度広島県立特別支援学校高等部入学者選抜
「検査B」より抜粋
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/581152.pdf

 広島県では、簡単な事象等に対し、自身で理由を考え、答える問題があり、これは東京都や大阪府では作文で問う傾向がみられますが、広島県においては独立している事が特徴的です。
令和6年度の問題を見ていると、どちらかというと次に挙げる北海道の問題に傾向が近くなったように思われます。

4 北海道

 北海道は、「普通科」に加え、東京都・大阪府の職業教育を専門とする学科にあたる科が非常に細分化されています。
例えば、農業科・木工科・工業科・家庭総合科・クリーニング科・被服デザイン科…など、多岐に渡ります。
志願者は「学習状況検査」と呼ばれる検査を受けることになります。
 特徴としては、東京都や大阪府より、広島県の問題の傾向に近く、難易度の幅が非常に広くなっていることが挙げられます。

5 滋賀県

 滋賀県は、令和5年度までの広島県問題と同様に、検査問題は「国語」「数学」のように、「科目」で分けられています。
出題範囲は概ね小学校4年生程度までの内容のように思われます。
ここまでで取り上げた自治体と異なる点としては、出題傾向が学力的側面に強い点と、ルビ振りの範囲です。
他の自治体は、漢字の読みを問う問題以外については、基本的にルビ振りがされていますが、滋賀県においては一定の漢字以外にはルビ振りがありません。
なお、ルビ振りの良し悪しを議論するものではなく、あくまでも出題形式等が自治体毎に異なる点を示しています。

6 横浜市

 これまでの自治体は都道府県でしたので、神奈川県を探してみたところ、横浜市のものが見つかりましたので、こちらで紹介します。
なお、横浜市の問題は出題例のため、年度ごとの出題内容については確認できていませんので、予めご了承ください。
出題例では、「聞き取り問題」、「認知能力を問う問題」、「基本的読み書き計算問題」、「生活能力を問う問題」、「教養(社会的常識)に関する問題」、「作文」から構成されています。
これは個人的な印象になりますが、他の自治体と比べると問われている内容はやや難しいように思います。
特に、日本地図、生まれ年の問題については、通常の学級に在籍する生徒でも答えられない者がいるのではないかと思わされる所もあります。

終わりに

 ここまで、6自治体の特別支援学校高等部の入試問題を見てきました。
今回はサンプル数が少ないこともありますが、概ねどの自治体も「認知能力」、「生活能力」、「基本的読み書き計算能力」の3項目で構成されている印象です。
読み書き計算能力」については、特に職業系の学科に関しては共通しておおよそ小学校中学年程度です。

 特別支援学校高等部の入試を受ける生徒は様々ですが、自治体によって入試問題の内容、求められる能力もまた様々であり、受験者や担当者はその傾向をよく知っておく必要があります。
また、中学校の教員だけでなく、小学校の教員もまた特別支援学校高等部進学から就業までの流れを知ることで、より円滑な進路指導に繋げることができるのだと思います。

 今回の内容が特別支援に携わる人に少しでも役に立てば幸いです。
また、需要があれば今後、自治体数を増やしていきたいと考えています。

※文章の揺らぎ等については、改めて訂正致します。

いいなと思ったら応援しよう!