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#24 「障害受容」というテーマ

「私は、周りの人とちがう」

「私は、周りとちがって◯◯ができない」

「私は、私の周りの人と同じような(能力の低い)人間ではない」 

 自己理解をする上で、そのような思いをもつに至る人は一定数いるものであると思います。
私たちは何かと比べ、その類似点や相違点を考える中で自己や他者を理解していくものです。
建設的で、肯定的な考え方もあれば、否定的なものもあり、しばしば悩みとして表出することもあります。

アトラス社 ペルソナ4のワンシーンより
「もう一人の自分と対峙する登場人物(陽介)」


 自分が受け入れたくない、受け入れられない現実に対し、人は様々な方法で対処をします。
変えられるものであれば、必死に努力をし、その困難さを乗り越えることも一つの方法です。
また、「臭いものに蓋をする」といった、現実から目を背ける方法もとられることがあります。

 さて、本タイトルの「障害受容」についてですが、
ロバート・ゼメキス「フォレスト・ガンプ」や、山田洋次「学校Ⅱ」などをはじめ、映画やアニメ、漫画といった文化作品においてもテーマとされることがあります。
内容の賛否はともかく、私自身もフォレスト・ガンプは非常に好きな映画であり、常に行動し、人生の歩みを進める姿に、生きることの意義を感じます。
他作品については割愛しますが、「障害受容」とは一つの人生テーマということがわかります。

ロバート・ゼメキス「フォレスト・ガンプ」

 
 では、研究ベースではどのようなものがあるのでしょうか。
障害受容理論については主に2つの理論が知られており、「価値転換論」「段階理論」が提唱されています。
 価値転換論では、「障害による制約があっても、自分の価値すべてが低下したのではない」とするものです。これは特に身体障害に関する研究で進められてきたものです。
 段階理論においては、「ショック・回復への期待・悲嘆・防衛・適応」や、「ショック期・否認期・混乱期・受容期」といったステップがあるものとし、逆行したり、行き戻りしながら進んでいく、としています。

 段階理論を少し具体的に述べると、
まず「自分に障害がある現実」を知ります。
そこでショックを受け、「周りとちがう自分」をどうにかしようとします。
しかし、現実が変わらないことに気づき、さらに落胆します。
その中で、他者との繋がりを避ける、他者に対して攻撃的になる場面も現れてきます。
しかし、何かのきっかけで自分自身を受け入れ、適応していきます。
 
 上記、コーンの「段階理論」は、フロイトの「防衛機制」とも似たステップに思います。

 しかし、「障害受容」の障壁は、障害そのものに対するネガティブな見方だけでなく、個人の有する認知能力や、周囲の人的環境によって十分な理解に繋げることが困難ということも考えられます。
「フォレスト・ガンプ」を例にとると、フォレストには、愛情を一心に注いでくれた母、理解者であり初恋の相手であるジェニー、その先でフォレストを認め、助け合う多くの仲間たちがいます。
仮に、それが逆であったと考えると、フォレストにとっては非常に過酷で、困難の多い道を歩まざるを得ない人生が待ち受けていたことは想像に易いものと考えられます。
しかし、様々な人との繋がりのあるフォレストも、映画の中において悩み、苦しむ姿が描かれています。

 では、現実的にはどうでしょうか。
生田、赤木(2019)は、軽度知的障害のある青年を対象とした障害受容に関する研究を行いました。
本研究では、調査対象のAさんが特別支援学校高等部を卒業し、福祉事業型「専攻科」に在籍、生活を送る中での障害に対する理解の変容について調査がされています。
そこでは、様々な人との関わりが、直接的ないし間接的に影響し合い、Aさんの障害受容に繋がっていったことが報告されています。


 ここまでで、「障害受容にはステップがあること」、「障害受容には様々な人との関わりが大切であること」を確認してきました。
今回はこれで最後になりますが、教育者側として更に観察すべきだと感じる点として、

障害の特性によって問題行動が生じ、子どもの困難さが見られること

障害受容の過程で生じる問題行動から、子どもの困難さが見られること

この2つは、似た行動等であっても、別のものとして捉えなければならない、ということを挙げます。
双方とも、都合の良い言葉を提示するならば「本人に合った支援」を行うことが最善の方法です。
しかし、困難さが生じている背景は両者では大きく異なっており、特に後者に関しては引き継ぎ資料で記載がされないことがほとんどです。
 
 また、後者においては、教育側が「本人が今、どのステップにいて」「周囲にはどんな人がいて」「どう障害受容に繋げていくか」をよく検討し、支援する必要があります。

このテーマは、個人的には今後も掘り下げていきたいと考えています。

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