「UMK」から入門する、アート&デザインとフィクションの世界
デザインを通じてテクノロジーのありえたかもしれない可能性を夢想したり、社会に対する問題提起を行ったりする。ときにアートのようにも見えるデザインの様相──。
今月のDesign Alternativesは、そんなアート&デザインの世界に、スペキュラティヴ・デザインの提唱者であるアンソニー・ダン(Anthony Dunne)とフィオナ・レイビー(Fiona Raby)によるユニット、ダン&レイビー(Dunne&Raby)によって2013年に行われた展覧会企画「United Micro Kingdoms(UMK)」プロジェクトを通じて迫ります。
「United Micro Kingdoms(UMK)」とは
UMKとは、イギリスの未来に関するフィクションを提示するプロジェクトです。UMKが想定する未来においては、イギリスは4つの独立した国家に分割され、それぞれの国家は政治体制も経済システムも生活様式も異なります。
プロジェクトの趣旨は『スペキュラティヴ・デザイン』(Speculative Everything)[Dunne&Raby, 2013=2015]に詳しいため、少し引用してみます。
私たちが現状に代わるイデオロギー体系を構築するための方法を探っていたとき、さまざまな政治思想を図式化するマトリックスを見つけた。いくつかバリエーションがあるものの、典型的なのは2本の軸に、左派/右派、権威主義/自由主義という4つの基準があるものだ。[……]この分類をもとに、私たちはイデオロギーに応じて4つの地域に分けられた新たなイギリス[The United Kingdom]について考察しはじめた。[……]次に、私たちは4つの地域ごとに、4通りのテクノロジーとイデオロギーの組み合わせを描いた。共産主義+原子力エネルギー、社会民主主義+バイオテクノロジー、ネオリベラリズム+デジタル技術、無政府主義+自己実験の4つだ[Ibid.: 240-241]。
具体的な展示内容は後述するとして、このようなテクノロジーとイデオロギーに関する広範な思考実験を行うための、展覧会を通じたデザインの実践が「UMK」なのです。
「UMK」の四つの模型:原子共産主義者/バイオリベラル/デジタリアン/無政府進化主義者
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