1月号座談会「都市の実験と、その未来」(前編)
キーワード:Woven City、実験都市、スマートシティ、トヨタ、コネクテッド・シティ、Sidewalk
日本発の実験都市──ウーブン・シティ
太田:読者のみなさま、今年もよろしくお願いいたします。今月号は、めずらしく(?)時事的なトピックをお届けします。去る2020年1月7日に行われたCES(Consumer Electronics Show)にて、自動車メーカーのトヨタが「ウーブン・シティ(Woven City)」という構想を発表しましたね。このニュースを中心に、実験都市/スマートシティについて話していきたいと思います。
瀬下:ウーブン・シティのニュースは、ちょっとテンションが上がってしまいました。いよいよ国内でもこういうプロジェクトが出てきたか……!みたいな。
太田:ぼくも調べるなかですごく好感を持ちました。プロジェクトのプレゼンテーションが上手だなあというのが素朴な感想でして、ロゴのビジュアルから都市計画のコンセプトまでを「網状」(woven)のイメージにより一気通貫で示した映像によく現れています。それでいて、絵空事では終わらなそうな説得力を感じました。自動運転やMaaS(Mobility as a Service)、サステナビリティといった、デザイン/建築/テック分野での21世紀的な諸キーワードを取り込みつつ、高い水準でそれらがまとまっているような印象を受けます。
瀬下:Wovenは「織り込まれた」ということで、トヨタが一番初めにやった織機事業のニュアンスも入っているから、なんだか本気感がありますね(笑)。最初にもう少し基本情報をいれておくと、この計画は、富士山の麓に位置する静岡県裾野市の約70.8万平方メートルの土地を敷地として2021年に着工予定となっています。この土地はトヨタが持っている東富士工場という工場で、要するに私有地なわけです。
ちなみにニュースでは、「都市の大きさは東京ドーム約15個分」とよく報じられています。そういうと大きい感じがしますけれども、おおよそ840m × 840mくらいのサイズです。これはGoogle マップなんかで見てみるとわかりますが、街や都市というよりは町内くらいの大きさですよ。
それから、設計やデザインは、建築家のビャルケ・インゲルスによるBIGが担当するとのことです。ツイッターを見ていたら、BIGのデザインを楽しみにするツイートもかなりありました。この話題は、もちろん国内でも取り上げられていて、おおよそ肯定的な声が多いのですが、海外も含めると否定的な声もある。今回はどちらも取り上げながら、この構想を取り巻く状況をなるべく見ていきたいと思っています。
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国内外のオルタナティブなデザイン事例を紹介するマガジンです。都市・建築や気候変動、参加型のデザイン、身体と社会をつなぐ衣服やメディアの話題…
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