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プロレスは 十人十色の 季語巡り

季節は過ぎ、G1優勝予想で熟考されている昨今、いかがお過ごしでしょうか。

…あ。いきなり少し堅苦しい書き出しでしたね。夏らしい挨拶をしてみたのですが。
そうなんです。何年もプロレスを追いかけていると、季節の変わり目や月の変化、これらをプロレスの行事で知ることができます。
近年は小さな団体でも年間スケジュールがほぼ固まっていて、ファンは「〇〇が始まるということはそろそろ寒くなるぞ」「△△が後楽園ホールで大会をやるってことは桜の開花ももうすぐですな」と感じることができます。プロレス暦というものがあるのです。
そして、プロレス界全体はもちろん、ひとつの団体を追いかけるだけでも、その月の代表的な大会やイベントを言葉で表現し、その文言で誰しもが同じ風景と季節を共有できます。いうなれば「俳句における季語」なのです。そう、プロレスは1年のサイクルを密着させ情緒や風情を感じながら楽しむことができるいなせなジャンルなのです。季語を知れば知るほど、プロレスに嵌れば嵌るほど、言葉が実に身近な風景に変わるのです。

ここで、私が真っ先に思いつく月ごとの「季語」を書き連ねます。

1月 イッテンヨン
2月 池上本門寺豆まき
3月 DDT周年ビッグマッチ
4月 WWEレッスルマニア
5月 BEST OF THE SUPER Jr.
6月 DOMINION大阪城
7月 7.30プロレス記念日
8月 G1 CLIMAX
9月 AEW ALL OUT
10月 ドームに繋がる秋の両国
11月 WWEサバイバーシリーズ
12月 世界最強タッグリーグ

1月。
ここはさすがに1.4東京ドーム大会ですね。既に30年以上続いている日本プロレス興行で最大のビッグマッチ。この相乗効果で年末年始には東京の多くの会場、多くの団体が大会を開催し、この期間のために地方や海外から遠征されるファンが首都圏に多く集まります。プロレスファンの初詣は東京ドームという方も多く、プロレス界で一番の書き入れ時です。

2月。
節分は日本だけでなく、プロレス界においても大事なイベントです。東スポ主催のプロレス大賞授賞式と並んで、各団体の主力選手が同じ場所に揃う貴重な場です。交流が盛んな現代は珍しくもなくなりましたが、数十年前まではそれだけで大騒ぎになるような奇跡的な顔合わせが毎年ありました。でも、それ以上は何も起きないです。豆まきですから。

3月。
DDTが毎年大きな会場で旗揚げ周年大会を開催しています。印象的なのは東日本大震災直後の2011年3.27後楽園大会、節電対策で映像などが使用できなかった中でDDTらしい発想力とチームワークで乗り切った伝説の大会です。コロナ規制がまだ緩和されていなかった昨年は25周年記念大会として両国国技館で行われました。

4月。
全日本プロレス春の祭典として43回もの歴史があるチャンピオンカーニバルも4月ですが、世界規模で見たらやはりレッスルマニアでしょう。観客動員数、視聴率、招致した都市への経済効果、グッズ収益、全てにおいて桁外れな世界最大の大会であることに間違いありません。エンデバー社が買収して初開催となる来年の40回目のWMはどうなりますか。

5月。
新日本では大型連休中の福岡レスリングどんたくが終わるとすぐにジュニアの祭典であるBEST OF THE SUPER Jr.が開幕します。今年で30回目を迎えました。コロナ禍の時期は12月に行われていましたが、ジュニアといえばこの季節、毎年華やかで熱がありクオリティの高い試合が連発され、ジュニアというブランド力を再確認させてくれる大会です。

6月。
昨年からの行事で定着しそう、定着してほしいのは禁断の扉ですが、上半期の総決算として新日本の大阪城ホール大会が現在の恒例行事となっています。サプライズも好試合も大物の参戦もあり、G1前の動きも見え始め、話題性に尽きない大会です。コロナ以前は超満員札止め確定だったので、早く観客動員もその頃のように活気付いてほしいですね。

7月。
ややこしいですが「プロレスの日」が2.19、「プロレス記念日」が7.30です。ただ、どちらも毎年何かしらのイベントがあるわけではないので正直ファンもそこまで意識していない日ですが、記念日ですからさすがに無視はできません。何か恒例行事があれば良いのですが。また、DRAGON GATE最大のビッグマッチ神戸ワールド大会もこの月です。

8月。
ここは一択で。今年は33回目、そして優勝決定戦が3年振りに両国国技館で開催、歓声も解禁されいつもの夏のG1がようやく戻ってきます。ちなみに初開催時はG1 CLIMAXという名称はリーグ戦を指す名称でありシリーズ名ではありませんでした。単発開催の予定が毎年恒例の歴史ある大会になったのも第1回のインパクトの功績かと思います。

9月。
夏が明けてひと段落といったところでしょうか、国内で大きな大会や記念日などはパッと思いつきませんでした。まだ数年の歴史だけですが、AEWのビッグイベントALL OUTがこの月ですね。おそらく今後何十年も経てばレッスルマニアのように団体を象徴する最高に派手で最大の興行収入を弾き出す大会になるのではないかと思われます。

10月。
新日本では毎年第二日曜日前後に秋の両国国技館大会が開催され、年内最後のIWGP戦が組まれるのが通例です。そして試合後にこの試合の勝者とG1覇者が対峙しエンディング、これが1.4ドームメインの予告編となります。この流れが定着し過ぎている今では派手なサプライズが起こることは少ないですが、内容は外れのない安定の大会でもあります。

11月。
この月も年末前の影響か大きなイベントが直ぐには浮かびませんでした。強いて言えば程度でWWEのサバイバーシリーズでしょうか。ロウとスマックダウンふたつのブランドによるチーム戦が行われますが、WWEなので対抗戦という空気は日本のそれより薄いです。選手が着用するそれぞれ赤と青を基調にしたブランド色コスチュームは好きです。

12月。
全日本の世界最強タッグリーグ戦、特にその優勝決定戦は年の瀬を実感できるプロレスファン定番の大会であり、50年もの間続いている最古のシリーズです。今は会場の規模が小さくなってしまいましたが、後楽園ホールで「オリンピア」を聞いて、日本武道館で「良いお年を」を感じるあの独特な雰囲気が復活することを信じてやみません。


以上が月ごとの「季語」で選んだ行事です。プロレス暦なのでどの言葉も文字数が嵩み、俳句で用いるにはやや難点もありますが、それすらも超越し情景を浮かばせる一句を詠む歌人がいましたら夏井先生はきっとツーランク昇格の評価をくださるでしょう。今後も特待生を目指して精進してください。

また、全団体を見渡しての季語を並べるとわかるのですが、ビッグマッチやイベントが手薄で印象に偏りができてしまっている季節があるのです。そうです。秋です。
秋は全体的に恒例になっている強い印象の大会が少ないと思われます。
何かしら理由があるのかもしれません。興行が重なるお盆と年末年始に挟まれた季節で各団体にとって解放と溜めの合間なのかもしれません。お客さんも散財した夏を終えて一旦落ち着こうか、と財布の紐をきつめに縛る時期なのかもしれません。行楽や娯楽が多く、食べものも美味しく、プロレス以外で多忙のため集客の見込みが立てにくいのかもしれません。
そこで。これから年間最大のビッグマッチを定着させようと企てている団体は、秋開催で恒例化させてみるのはいかがでしょうか。今なら真っ先に浮かぶ「季語」になるチャンスが高いと思われます。


自分の好きなジャンルや趣味で季節を感じる、これはとても贅沢なことと思います。
プロレスの知識や愛でプロレス視点の季節や月の移り変わりを感じる。記事の冒頭で著した一文のように、ご友人ご親族様へのご挨拶も粋なものになるはずです。
ちなみに、書き出しの挨拶は…もうおわかりですね。ええ、暑中見舞いです。

皆さんの「季語」は何ですか。
推している団体や選手など個人の趣味趣向によって異なるので、人それぞれのプロレス観がその言葉だけで表現できます。
「プロレス季語発表会」なるものがあればぜひ覗いてみたいです。その場に100人いたら100通りの「季語」が出てくるはずですから。

プロレス暦とプロレス季語が世間に広く浸透し、いつか、伊藤園の「お~いお茶」のラベルにこんな俳句が載りますように。

「悲喜交じる レッスルマニアと クラス替え」


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