雨と霧
悲しい夢を見た。もう会えない人の夢だ。冬の朝は嫌だなあ…。
雨は降っていないけれど、グレアム・グリーンの『情事の終わり』を思い出した。
冬の冷たいどしゃ降りの夜から始まるストーリー。
寝室のどこかにあるスピーカーからマッシブ・アタックの曲が流れ始めた。空調が微かな音を立てて0.5 度ほど室温を上げ、南側の窓を覆う縦形ルーバーが30度ほど緩やかに開いた。ダウンライト、壁に投影されるBBCニュースの映像は徐々に光量を上げ、夫の啓介が私のために設定した朝を作り出していく。
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