夜の喧騒 (超超超超短編小説)
時計の音が気になった。じっく、じっく、じっく、じっく…もう夜中なのに、あしたは仕事なのに、毎日仕事なのに…じっく、じっく、じっく、じっく…うるさいな、やけに耳ざわりだ…じっく、じっく、じっく、じっく…うるさい…
時計の針が、夜の空間を断罪するように、時を刻んでいる。空間もきざまれていく…
電池が切れるまで止むことなくひびきつづける針の音が気になって、ねむりが中断させられていることにきづいたから、電気スタンドをつけて、壁のたかいところにかかっている時計を外して、そのなかに埋め込まれている電池をとりだした。
するとさっきまでうるさかった時計がしずかになった。そのかわりに静寂がうるさかった。
なにをしてもうるさいのは、自分のこころがうるさいからだろうとおもったが、こころの電池をとる(切る)手段などないわけだから、自分の内部の喧騒にしずかに耐えるしかなかった。