術後治療

退院後。

右腋と胸、背中に麻痺が残りつつも腕と手は自由に動く。パクリタキセルの副作用の痺れも軽減していってるので、傷跡と腕の上げ下ろし時の痛みがある以外は快調に過ごしている。

「右乳房を全摘出したことでショックはないのか」とよく訊かれる。乳癌を告知された時は全摘出が嫌で仕方がなかったが、実際は摘出を悲しんだり怖がったりするのは治療が始まる前くらいまでで、実際に癌のサブタイプが判明し、高確率で再発と転移が起こると知ってからは早く摘出して再発の芽を摘んでしまいたい気持ちの方が強くなる。
摘出後はこれで次の治療に進めるのだという安堵感が強い。

術後3週間後の検診

エコーで右リンパと傷口の診察をする。
リンパには水は殆ど溜まっていないし、傷口も良い状態だそうだ。
次に術中に摘出した癌と病理検査の結果を聞く。

抗がん剤治療前に6cmあった腫瘍は3cmになり、20個リンパ節を摘出して11個に転移があったとのことだ。恐らく癌は全身に回っているのではないかと想定する、と告げられた。
転移の可能性は非常に高く今の時点で五分五分。
抗がん剤の治療効果はgrade1bというもので3分の1の癌細胞が高度なダメージを受けているが、残りは弱りながらもしっかり生きていたのだそうだ。


ここからは再発と転移を防ぐための治療となるのだが、予定では11月中旬からエンドキサンとアドリアシンという2種類の抗がん剤を2週間毎に点滴していく予定だった。

これらは前回のパクリタキセルとは違った辛さがあり、味覚の低下、強烈な吐き気や嘔吐がある 上に血中の免疫力が低下するので抗がん剤投与の翌々日にジーラスタという注射を打ちに来なければならない。
抗がん剤投与日は誰かに付き添って貰うように注意もされた。傷の治りが良いので年内には投与は終わるとのことだった。

ただ、それだけ辛い思いをして治療を受けても「これだけの効果が期待出来る」と示せる根拠がなく、やれば効果はあるだろうとしか言いようがない。再発率も高いのでやれることはやった方がいいとは思うが、心身のダメージを考えたならこのまま放射線治療+ホルモン治療に移っても、再発率に大きな変化はないので良いのではないかと乳腺外科の会議でも出て、意見が分かれたのだそうだ。

正直な気持ち、抗がん剤治療は受けたくない。
比較的副作用が弱いといわれてるパクリタキセルですら投与後は胃もたれとだるさが数日続き、日によっては寝込んでしまって体重も一気に落ちた。手足の酷い痺れは未だに抜けない。
これがもっと強い副作用となれば、目指してる年度末までの職場復帰も難しくなるし、治療中に辛さからまた死を恐れて眠れなくなったりするかも知れない。あんなのはもう御免だ。受けずに済むなら受けたくない。
しかし、全身に癌が回っていると想定したなら癌細胞が弱ってるうちに叩いてしまった方が良いのではないか、という気持ちもある。

結局その日は今すぐには決めきれないと思うので来週までよく考えて下さい、と結論は持ち越しになった。この歳で生死に関わる選択をすることになるとは思わなかった。


治療開始の11月まであと一週間。

未だに治療方針を決めきれずに迷っている。


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