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◇特集【自我感情と表情】

 私たちは人の顔を見るときに、左右対称の顔や、パーツ全体がバランスよく配置されている顔の人に好感を持つとされています。しかし、それ以上に魅力を感じるのが笑顔です。

豊かな表情が作り出す魅力

  表情が豊かな人はそれだけでも美しく感じられますが、ヒトは笑顔の人をより魅力的に感じることが分かっています。

 また、意識したつくり笑いでもよいので、口角を上げ笑顔をつくる。そうすると自然と心や身体が明るく爽快になることがあり、ストレスが和らいだり、免疫が高まったりする癒しの効果があると言われています。時には姿形から入ることで、気分を上げたり、心をリフレッシュできたりするものです。

 多くの表情を豊かに表せるのは、私たち人間の特徴の一つです。日頃から笑うときには思いきり笑うというような行為が、自らを魅力的にみせるとともに、多幸感が得られると考えられています。

 さらに、常に嬉しい、楽しいといった前向きな感情だけを感じるよりも、その時々の「不愉快さ」や「不快さ」も捉え、そのときその場面で感じた喜怒哀楽を表情に出して行く人のほうが幸せであるということが、海外の大学の研究結果で新たに分かっています。嬉しいときには嬉しい表情を、哀しい場面では哀しい表情を現せる、表情豊かな人のほうが幸せだと言えるということです。

 ただし、すべての感情をそのまま表情として出せばよいというものではないようです。状況によっては理性や知性に基づいて、時には感情を抑えたり、あるいは逆に奮い立たせたりして、表現することが必要なときもあります。

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理性と感性のバランス

 人間は理性と感性を併せ持ち、その時々によって、理性的になったり、感情的になったりします。理知に富んだ良さもあれば、理性に偏り過ぎて理屈を並べるような人間になってしまうと敬遠されがちです。また、理論的過ぎると冷ややかな人間と見られてしまうかもしれません。

 一方、感性は豊かな感情で琴線に触れることもあれば、相手の感情が強過ぎて受け止めきれなかったり、自身を正しくコントロールできなくなったりと、それぞれ一長一短があります。

 そのような多彩な感情に基づいて表情が出てきますが、その出し方の判断としては、自分の感情をありのままに表情に出して、周囲に良い影響を及ぼすのであれば、それは健全な感情として大いに表情に出せばよいでしょう。

 あるいは、相手を傷つけたり、周囲との摩擦を引き起こしたりするような悪影響を与える感情は、病的な感情、不健全な喜怒哀楽と捉え、理性や知性をもって感情に走り過ぎないように努めるべきです。

 不健全な感情というのは、感情そのものが相手の感情を傷つけるようなヒステリックなものであったり、周囲の人を暗くし、落ち込ませるような感情であったりします。例えば健全な悲しさは、病的なうつとまったく同じではありません。社会を良くして行く健全な怒りは、人間関係を壊すような破壊的な怒りとは違います。健全な感情に基づく、人間性豊かな表情を出して行かなければなりません。

周囲や相手のためになる表情を出せるか?

 相手を諭すときや躾、教育をするときなどには、自身の感情とは異なる表情で相手と接することが必要なときがあります。外見と内心が異なるような、いわゆる裏表があることとは違います。あくまでも高い知性により、冷静に判断されることが前提となります。

 例えば、相手が自分のために言ってくれたことを、自分のプライドを傷つけられたといって怒る感情が起きたとします。自分に素直な感情というのは自己中心的な感情である場合が多いのです。指導的な立場に立つ人や、周囲に貢献したいと思う利他精神の強い人であれば、一段上を行って、自分に関することで怒りの表情を出すのは控えるでしょう。こういったことをさらっと流せるとしたら、大きな器の人間と言えます。

 怒りについては、「怒りは功徳の林を焼き尽くす」と聖人が説かれています。この言葉によると、不健全な感情で怒ることは、せっかく苦労して積んだ徳を一瞬のうちに無くすことになるのです。

 他方、誰かがいじめられているのを見て、我関せずと平然としているようだと正義感が欠けているとみなされるでしょう。自らを奮い立たせて、怒りの感情を表情に出して、助けに行かなくてはならない場合もあります。

 要は「腹が立つときに腹を立てることは、誰でもできる。腹の立たないときに腹を立て、腹が立つときに、さっと流してしまう」くらいの冷静さや鷹揚さがあれば、組織や周囲の人のためになるように感情をコントロールし、表情をつくることができるでしょう。このようにできれば信頼されて一目置かれる人材になれると思います。

 感情によって表情が出て、その感情や表情によって精神状態が左右され、周囲に影響を及ぼします。その関連をよく理解することが大切です。

 それぞれの人生、どのような生き方をしてきたか、また、自身の価値観や人生観が、現在の表情に表れていると思います。人間性を豊かにして内面からにじみ出る美しさを具え、笑顔で最高の化粧をしたいものです。

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