髪を寄付してロン毛から卒業したよ!
何年もただ伸びている髪。ロングヘアーなどと言ったら、こじゃれ過ぎている、ロン毛。
わたしは面倒くさがりである。1週間くらい引きこもってて平気だし、外へ出ない日はパジャマのままだし、メイクどころか眉毛すら整えていない。
友人の乙女たちが毎日メイクして綺麗な格好で会社へ行き、さらに少なくとも2ヶ月に1度は美容院で髪を整えている間に、わたしは引きこもってぼんやりと太り、生まれつき伸びるのが早い髪はあっという間にショートボブから腰より長いロン毛になっていた。
ロン毛は、とにかく楽である。タダだし、朝も手ぐしでひとつに結ぶだけ。セットが必要なボブやショートよりよっぽど楽だ。もともと丈夫な髪なのでヘアケアも特別なものは必要がない。
難があるとすれば、ふたつ。カラスの行水状態のシャワータイム5分に対して、ドライヤータイムが10分以上あること。濡れた髪の重さったらハンパなくて、せっかく暖まった肩がバッキバキに凝ること。
とはいえ、日に日に増していく肩こりよりも「楽」「タダ」「行きつけの(正確には、数年前に何度か行った程度の)美容院が遠い」「美容院探しが面倒」「美容師としゃべるのが面倒」「とにかく面倒」と、うだうだうだうだ。髪を切らない理由なら山ほどあった。「身だしなみとして」「とにかく見苦しい」等、他人から見れば髪を切る理由も山ほどあっただろうと思うが、ぐずぐずの恋愛相談と同じく、そもそも切ることを前提としていないので、客観視は不可能、お別れは不可能なのである。
しかし、ある日の就寝時、決定的な別れの決意が生じた。
く、くるしい……ッ!!! し、死ぬー!! まじで死ぬー!!!
金縛りである。今まで経験した金縛りの比ではない息苦しさに、まさに命がけの全力で、ガバァッ!!っと起きあがると、大量の汗とともに、ロン毛が首に絡みついていた。
ぶらんと胸に下がった毛先をつかんで、ぐるりとゆっくりほどいていく。……いーち、にーい、さん? 2周とちょっと。さぞかし素晴らしい寝相であったに違いない。ロン毛はきっちりと絡みつき、持ち主を半死の目に遭わせてくれたわけである。
金縛りの原因、見つけたり。
つか、自分の髪で金縛りにあうなんて聞いたことがないよ!!
つか、寝相が悪くて死ぬなんて聞いたこともないよ!!
3年くらいつきあったかな、ロン毛。冬はあたためてくれよね。重たいなって思った時もあったけど、イベントがある時はおしゃれして楽しませてくれた。まだ大丈夫、まだ大丈夫、と言い聞かせるようにつきあい続けてきた、ロン毛、の、裏切り。
お前なんかとはお別れだッッ!!!!!!
春は別れの季節だからな。ついにロン毛からの卒業を決意だ。
が、なにしろ美容院に行きなれていない。美容院を選ばなきゃいけない。ほぼ「おまかせ」としか注文してこなくて、右が金髪・左が黒髪、とか、刈り上げるくらいのショートとかにされて喜んでいた自分が、今更新しい美容院で何を注文しろというのか。「おまかせ」をゆるしてくれる美容院はどこにあるのだ。どうしたら入る前にそれがわかるのだ。昔の自分はどうしていたのか全く思い出せない。「どれだけ放っておいたんですか」や「ちゃんと切り揃えつつ伸ばさないとダメですよ」攻撃はもちろん、「前髪自分で切りましたね?」の辱めが襲い掛かってくるのは間違いないし、事実なのだから防御のしようがない。
もしかして自分で切ってもいいんじゃないの? 動画見たらセルフカットとかあるんじゃないの? と、検索しかけて、ふと思い出した。数年前に偶然目にした海外の記事、
ロン毛をガンの子供に寄付して無料のロックフェス
っていうやつ。
記事詳細の記憶は曖昧だが、ロン毛に革ジャンやらスタッズやらのおじさんたちが次々とスキンヘッドにしていき、めっちゃうれしそうに笑っていたのが印象的だった。
髪の寄付、で検索じゃ!!
結果→髪の寄付=ヘアドネーション。寄付した髪が小児ガンの子供のウィッグとして使われる、というもので、日本でもやれるし団体もある。
ただ毎日ごろついてネットサーフィンしてる間に伸びちゃった毛が、他人様の役に立つんだって!!!
奇跡のような話である。信じられない。自分から生えたものが何かの役に立つなんて、そうそうある機会じゃない。Q&Aによると、癖毛やカラー、白髪混じりでも構わない、とのこと。寄付できる髪は31cm以上。……余裕である。なんなら45cmくらい持ってってくれていい。
すばらしいシステムだぞ、ドネーション。
あちらさんの要望と、こちらの要望が完全一致。と、なれば、がぜんやる気が違う。ソッコー検索。近所の美容院ブログにヘアドネーションの記事を見つけて、予約フォームに入力! 翌日GO☆
切る前。
わたし「めっちゃ短くしたいです」
美容師「いやです」
わたし「え」
ひと晩考えた末に導き出した唯一の注文を、断られたよね!!!!!
美容師「前髪自分で切ってますよね」
わたし「すみません」
美容師「眉毛ととのえたりしないんですか」
わたし「しません」
美容師「こういうナチュラルっぽいの今は流行ってないですよ」
わたし「そうですか」
美容師「流行ってないですよ」
2回言ったよ!!!! 大事なの!!? そんなに大事なの!!?
美容師「去年の秋くらいまではこれで良かったんですけどね」
3回目にカウントできるコメント。よっぽど気になるんだろう。が、眉毛を整えるメニューをプラスしたりはしない、かたくなさ。なんなの? 流行ってる眉毛じゃないと死ぬの? 自分で眉毛を整えない奴はデスノートに書かれる法律でもできたの?
美容師「(本を持ってきて)こんなボブどうですか?」
わたし「じゃあこれで」
美容師「でもなぁ、これモデルさんが可愛いんだよなぁwww」
わたし「」
美容院、想像していたよりずっとずっと、針のムシロだった!!!! もしかしたら、ドMさん専門店だったかもしんない。
血まみれ匍匐前進気分味わって、よろよろ帰宅。そして慣れない自撮り。これはこれで血反吐ものなんだけど、載せるからにはこれ以上言い訳すまい。
切った後。
頭かるーーーーーーい!!!(歓喜)
これでもう自分の毛に殺されないぞ!!!! 金縛りに、サヨナラだっ!!
というわけで、わたしみたいな面倒くさがりの人! ただ伸びちゃってる人!! ヘアドネーション、おすすめ! 肩こりも心なしか良くなるし、少なくともドライヤータイムは10分以上が3分に激減!!
そうそう、肝心の寄付する髪ですが、協賛している美容院ではまとめて送ってくれたりするので聞いてみてください。サイトに記載があることも多そうです。行きつけの美容院がある人は、切ってもらって、自分で送ることもできます。わたしが行った店は協賛美容院に登録してないけどボランティアとしてやっていて、数人分集めて送ってくれるそうで、同じ週にやっぱり寄付したくて現れたロン毛の誰かの毛とともに、ぽいっと引き出しにしまわれました。
春に向けてイメージチェンジを考えているスーパーロングヘアのおしゃれな人も、選択肢のひとつとして、どうでしょう。
↓今すぐでなくても、興味がでた方は、ぜひ。↓
Japan Hair Donation & Charity(通称 JHDAC ; ジャーダック)
http://www.jhdac.org/
以上、ロン毛から卒業したーい!を叶えた話、でした。
今後とも、よしなに!
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セリザワケイコ(脚本家・作詞家・詩人)
◎本屋さんへのご注文
詩集「音の蛹」 著者 セリザワケイコ
ISBN978-4-906923-01-4 C0092
発行 七草書房
発行元(株)文苑堂 千代田区神田神保町1-25
TEL 03-3291-2143 FAX 03-3291-4114
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