夢と幻と現実と。
この会場でどれほどバレーボールを見たいと思っていたか。
外観を見るだけでも感情が溢れ出します。
多くの人にとっては東京オリンピックが延期になって2021年に実施されたことも、コロナ禍という現状の中で無観客で実施されたという記憶も、時間と共に薄れてしまうのだろうと思います。
あれから3年の時が経ち、パリオリンピックを経てやっと私はその場所に辿り着くことができました。とてもとても強くここに来たいと願っていたので、2021年のに観客として参加することができなかったことを私はきっと一生、忘れないと思います。
2015年からバレーボールを見るようになって、いろんなことがあって東京オリンピックで戦う彼らを見ることができましたが、開催国枠での出場だったから出られたというような声も多くありました。
パリオリンピックでほぼ完成系だった代表チームもまだまだ進化の途中だった。目標は決勝トーナメント出場でした。
2020年に開催されるはずだった東京オリンピック。
1年延期という事実はこのチームを大きく変えました。
2019年WCのロースターでほぼ完成系だと思ってたチームは2021年を目指す過程で驚くほどの痛みを伴う変化がありました。
私をバレー沼に導いたきっかけになった1人、柳田さんはその影響を受けて、東京オリンピックのメンバーから外れることになりました。
祐希さん、柳田さんを追いかけてきたバレオタ人生だったのでその決定は残念ではあったけど多くの彼のファンがそうだったように、その決定を疑問に思ったりはしませんでした。
前のクラブシーズンの戦い方、そして祐希さんがキャプテンになると聞いた時からそんな予感がしていたから。
その予感を確信に変えたのは髙橋藍と大塚達宣という存在でした。
2021年5月、紅白戦でこの2人の代表選手としてのプレーを初めて見た時に彼らが本気でポジションを狙っていることを肌で感じて、その頼もしさを感じ、さらにVNLで彼らの活躍を見た時、このチームが東京だけを目指しているチームじゃないことは彼らにとってポジティブな条件でしかないだろうな、きっと選ばれるだろうなと思っていました。
予感は現実に変わり、代表チームはほぼパリで戦ったメンバーで東京オリンピックを戦うことになりました。
ずっとずっとこの代表チームがオリンピックで戦っているところを絶対に見るというのが私の目標でしたが、それは成就することはありませんでした。
残念というよりも、悔しかった。
訳のわからないパンデミックにチャンスを奪われたことが。
なぜ、私はその場にいなかったんだろう、と何度思ったことか。
2024年夏、ようやく私は自分の目標を達成して、パリオリンピックの会場で代表の試合を見ることができました。
その体験は想像してたよりも遥かに心を鷲掴みにされる、生涯に何度かしか体験できないだろう出来事でした。
今でもまだそれを冷静に語ることができないほど衝撃を伴うもので。
いつか時間が経って冷静になったらこんな風に文字にするかもしれません。
2024年秋、私はもう一つの目標を達成しました。
東京オリンピックの会場だった「有明アリーナ」でバレーボールの試合を見るというそれでした。
まさかSVリーグの1試合を有明アリーナで実施することは私がバレーボール観戦を始めた頃には想像すらできませんでした。
石川祐希という存在がバレーボールか界に現れて、取り巻く世界は大きく変わりました。彼自身も大学在学中も含めて10シーズン目のイタリアリーグを迎え、プロとしてのキャリアをスタメンが取れるチームからスタートして今年は最強軍団と呼ばれるペルージャへ移籍し、いつも通り、私たちをワクワクさせてくれるプレーを見せてくれています。
最初の男子バレー人気の波を祐希さんと作ってきた柳田さんはグレートベアーズというSVの中でもプロを感じさせる洗練されたチームでSVリーグの人気とその未来を切り開き続けています。
そして東京オリンピックで新星のように輝いた藍くんは3シーズンのイタリアリーグを経て、SVリーグ初年のまさに「顔」として獅子奮迅の活動を続けた結果、リーグの試合で有明アリーナ2日間を1万以上集客するというとんでもない世界を見せてくれました。(もちろん、彼だけの人気ではないとは思いますが、ラストピースを埋めたのは間違いなく彼の集客力だと思っています)
そのうちの2人の試合を有明アリーナで見られるという幸せを手にできたことが本当に奇跡のようでした。
ここに導いてくれた全てのことにただただ感謝しています。
この機会があったから、あのパラレルワールドで行われたような現実感のない東京オリンピックの会場で、柳田さんらしいサーブやBAを見ることができて、私の脳裏にはうっすらあの時のユニフォームをきた彼が見えた気がしました。
そして、あの頃より遥かに逞しくなった藍くんの背中に「21番」のユニフォームを着た彼がぼんやり重なり、バレーボールを取り巻く時間が過去から繋がってきたんだということをより強く感じたりもしていました。
ここは多分、きっとゴールではなくて。
何か新しいことの始まりのはず。
SVリーグがこの国で成功して、強いリーグに育っていくことも、
代表がオリンピックでメダルをとることも、点のように見えて全てが一つの道の上で繋がっているんだろうなと思っています。
このタイミングでバレーボール観戦を好きになれたこと、そして応援したいたくさんの選手がいることは私の人生にとって大きな収穫の一つなのかもしれません。
私のバレー観戦人生もまだまだ続きます。
ここからどれほどたくさんの試合を見れるかな?
願わくばその中にメダル獲得の試合が入ることを心から願っています。
長く一つの競技を応援し続けることはその壮大なドラマを目の当たりにする大きなチャンスです。
深い深い沼に皆さんも、ぜひいらしてください。
お待ちしております。