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お天道様ノ掴み方- 14

「つまりは、どういうことなんだ」

僕は、彼女にわかりやすく、状況を説明してもらうために、開口一番に、そう、切り出す。

「うむ。実はの?そなたにはこの間話したであろう、例の、『アヤカシ』の気配が、最近またどうも強まってきているようなのじゃ」
「アヤカシ・・・」

怨念や行き場を失った魂の成れの果て- だったか。確かに、なんて、恐ろしい存在なのだろうか。

「何なの?その、アヤカシって」
「簡単に言うと、怨念みたいなもので、そいつらが、どうやら、僕を殺そうとしているらしい」
「何それ?!た、大変じゃない!」
「まあ、確かにそうなのだが・・・」

だからと言って、僕に、その、「アヤカシ」とやらに立ち向かうような力は、ハッキリ言って全然持ち合わせてなどいない。

妖が言うには、過去に話した、妖の、その力とやらを信用する他ないのだが・・

「ゆう。・・正直、どうしたらいい」

僕は、今までのことと、今日の一連のこと、彼女- そう、響のことも含めて、これまで起こった全ての出来事が、僕にとって、本物- リアルの出来事だったのだと、ようやく、改めて自覚をする。

三途の河や、死神、果ては神様なんて、本当に存在していたのか・・・

「やっと、その気になった様じゃの♪」
「ああ・・でも、ちょっと待ってくれ」
「どうしたの?夕君」
「何故、僕を狙う?」

考えてみれば当たり前の話だった。
何故、僕を取り殺そうなどと恐ろしいことを企てる存在がいるのか。僕には皆目検討もつかなかった。僕が正直、何をしたっていうんだ。

「なるほど。そこが気になるのか、夕よ」
「まあ・・・」
「これはのう・・・簡単に言えば、古くから続いてきた・・そう、言わば、『因縁』なのじゃ」
「因縁?」
「そう。因縁。つまり、そなたの縁のあった、遠く、古い、どこかの誰かによる、忌まわしき憎しみが、果てはそなたからにとっては遠い未来からも、今こうして、そなたへ向かってやってきているのじゃ。そしてな?夕- 何故この時代のお主が死ななければならない標的なようなものになってしまったのかと言うと、そこが正直、儂の責任なのじゃよ。夕よ」
「なんだか、もの凄い話だな・・」
「ほうじゃのう。人は恐ろしい。それが時に、憎しみを持って死んでいってしまった場合はの」

彼女の話は、えらくわかりやすかった。
なるほど。つまりは、何者かによっては、今の、この時代の、この僕という存在が、邪魔でしょうがない。という訳か。

・・僕も嫌われたもんだ。と、僕は、自分のせいでは決して無いであろうよくわからない罪悪感にとらわれる。と同時に、そんな理不尽なことを認められるもんかと、いたく憤慨する。

「僕は・・死にたくない。だから・・」
「だから?」
「力を貸してくれ。妖」
「そうじゃの♪それでこそ、儂が見込んだ男なのじゃ♪」
「どうしたらいい。どうしたら、そのナントカってやつらを打ち払える」
「そなたはの、既に、妾の名と、そなたの名の下に、契約の儀を交わしておるのじゃ」
「契約の儀?」
「思い出せ。夕よ。そうじゃ、幼い頃のことじゃ- そなたは、既に妾と契約をしたのじゃ。その、陽(たいよう)をも掴もうとする手の平で-」

たいようをも・・?何だ?そりゃ・・

「まあ、今は分からずともよい♪」

彼女はそう言うと、ニコっとだけ笑い、そして徐(おもむろ)に立ち上がる。

何故だろう- 僕は、彼女のそんな笑顔を、何故か、どこか、儚く感じたのは-

彼女はその呼吸を乱さぬよう、綺麗に整えたのち、スゥッと一息だけ息を吸うと、突如、何かの呪文のようなものを唱え始める。

「妾、二つの夕陽と共に、ヒカリの契約を交わさん- 汝、陽ノヒカリと夕の元に、誓いの儀を交わさん- 汝が戒めと共に、我、ヒノヒカリと力が命ずる・・・」

彼女がそう、何か呪文のようなものを唱え始めた瞬間、彼女の足元からは、突如、爆音や爆風、轟音と稲妻のよう光と共に、白く、輝かしく、そして同時に、どこか凶々(まがまが)しくも感じられた、そんな、金色の円陣のようなものが現れ始める。

「な?なんなんだこれは?!」
「キャアア!」
「響!大丈夫か?!」
「う、うん・・!な、なんとか・・・」

何だかよくわからないが、とにかく、やつは凄かった。これが神様の力ってやつなのか?そして、だからこそなのか、僕は、この時ばかりは「ああ- コイツは本当に、神様みたいな存在なんだな」と、心の中でそう思った。

スゥ・・と、彼女は、その呼吸を吐き終えると同時に、その音や光の円陣も、消失する。

「あとは、誓いの儀を果たすのみなのじゃ♪」

誓いの儀・・一体、どんな儀式だというんだ・・・

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