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CDOってどんな仕事?

マネーフォワードでCDO(Chief Design Officer)という役割をいただいてから1年が経ちました。一言でCDOといっても事業内容や事業ステージ、組織規模によって、その役割はさまざまだと思います。2018年に「デザイン経営宣言」が発表されてから、スタートアップを中心に経営レベルでデザインに取り組む企業は増えました。CDOという仕事にチャレンジする人も増えているのではないでしょうか。

1年前の自分がそうであったように、CDOの仕事というのはよく分からないものです。この1年間、手探りでやってきて、ようやく自分なりのかたちが見えてきたように思います。今同じようにCDOという仕事に向き合っている方、そしてこれから目指す方の参考になればという思いを込めて、この1年の活動を振り返ってみます。


まずは自分の役割を宣言する

先述したようにCDOに決まったかたちはありません。その組織の状況において求められることを自分で定義します。例えばシングルプロダクトのスタートアップであれば、そのプロダクトのデザインをリードする役割が求められるでしょうし、10名を超えるデザイン組織であれば、組織をまとめるマネージャーとしての役割が大きくなるでしょう。

マネーフォワードは「お金を前へ。人生をもっと前へ。」というミッションのもと、40以上のプロダクトを提供している会社です。デザイナーは50名近く在籍しています。もちろん個々のプロダクトのデザインを高めることも、デザイン組織のマネジメントも大切ですが、拡大する組織の中でデザインがしっかりと全社的に機能することが求められます。そこで、CDOのミッションを以下のように定義しました。

デザインの力を最大化し、マネーフォワードの目指す社会を実現する

マネーフォワードが目指しているのは「人生を前に進めること」ですし、バリューのひとつには「User Focus」を掲げています。デザインとは人を中心に考え課題を解決するプロセスですから、マネーフォワードのミッションの実現においてデザインは大きな可能性を持っています。

このミッションにおけるCDOの役割は以下の4つです。

1. 経営にデザインを取り入れる
2. デザイン組織の強化
3. プロダクトデザイン品質の向上
4. ブランドの全体最適

それぞれの役割について具体的に見ていきましょう。

1. 経営にデザインを取り入れる

CDOは経営メンバーのひとりですから、当然経営への貢献が求められます。多くのデザイナーにとって、プロダクト開発やマーケティングにおけるデザインはイメージがつきやすいと思いますが、経営にデザインを取り入れるとはどういうことでしょうか?

私が主に取り組んでいることはデザインアプローチによる経営課題の可視化や解決支援、また抽象的な概念の視覚化などです。マネーフォワードでは定期的に役員合宿を開催していますが、そこでは経営課題をテーマにしたワークショップの企画やファシリテーションを行なっています。例えばビジョンを設定しバックキャストで考えるアプローチや、顧客体験を中心とした考え方などを用いて経営課題と向き合います。

この役割を果たすには、常に経営の状況を理解し、会社として目指すものをどのように実行していくのかを考える必要があります。それはときにあいまいで正解が見えないものです。デザインという仕事は人やものごとをよく観察し、豊かな発想力をもって抽象的なものをかたちにしていく仕事ですから、経営における不確かなものと向き合っていく上で、デザインが果たすべき役割は大きいのではないかと感じています。

2. デザイン組織の強化

これはイメージしやすい役割です。デザイナーの採用や評価、育成に携わります。マネーフォワードは成長中の会社ですので、デザイン組織もどんどん大きくなります。スケーラビリティがあり、変化に強いデザイン組織をつくらなくてはいけません。デザイナーが活躍できる環境を常に考えます。

仲間を増やすためには、マネーフォワードのデザイン組織について知ってもらうことも大切です。このnoteもやはりマネーフォワードのデザインに対する思いを知って欲しいという願いを込めていますし、外でお話しをする機会をいただければ、積極的に引き受けるようにしています。ぜひ登壇機会がありましたら気軽に声をかけてくださいw

それから、マネーフォワードは各デザイナーがより事業やユーザーに対してコミットできるよう、カンパニーごとにデザイン部を設置しています。分権型のデザイン組織はメリットがある反面、デザインの目指す方向性にバラツキがでやすくなるのがデメリットです。そこで横断組織としてデザイン戦略室を設置し、縦と横でつながるような構造をつくっています。このような横断組織をリードし、全社的な連携を高める役割も担っています。

縦と横でつながるデザイン組織

3. プロダクトデザイン品質の向上

個々のプロダクトはその領域の専門性をもったデザイナーがリードしますので、CDOとしての役割は組織全体の底上げが中心になります。ユーザーリサーチの導入やUIデザインにおけるモデリングの普及など、開発プロセスの向上を支援します。デザイナーに限らず会社全体がユーザー中心の組織になるよう、その意識を高めることも重要です。

マネーフォワードのプロダクト

マネーフォワードではノンデザイナー向けのデザインスクールを社内で開催しています。ここでは私に限らず、デザイナーがエンジニアやビジネスのメンバーに向けて、デザインの考え方や手法についてレクチャーします。デザインはデザイナーだけでつくるものではありませんから、全社的なデザイン力の向上を目指します。

他には事業部内で完結しないような組織横断的なプロダクトのデザイン指揮をとることもあります。マネーフォワードにはマルチプロダクトをスモールチームでつくる文化がありますので、それを大切にしながら、プロダクト間の体験の一貫性に目を配っています。

4. ブランドの全体最適

ブランドは資産ですから経営レベルからのコミットが求められます。特にマネーフォワード MEやマネーフォワード クラウドといったように「マネーフォワード○○」に価値を集約させるマスターブランド戦略を展開をしていますので、ブランドの一貫性は大切です。

プロダクト展開

もちろん個々のプロダクトごとに特性やターゲットが異なるのでそれは大切にしつつ、お客様にとっては同じマネーフォワードとして見えますので、その期待を裏切らないよう「マネーフォワードらしい」ブランド体験を整えるのが仕事です。

ブランドはロゴや色といった見た目の部分だけではなく、コミュニケーションの温度感やプロダクトの使い勝手など、あらゆる要素の集積によって築かれます。デザイナーに限らず、マーケティングや広報など幅広いメンバーのHubとなり、中長期的かつ横断的な視点からブランドをリードします。

ロードマップを描く

4つの役割について書いてきましたが、これらをすべてやりきるのは簡単ではありません。範囲が広く課題も多いので場当たり的な対応になりがちですし、自分ひとりでできるものでもありません。そこで、中長期的かつ組織横断的な視点でロードマップを描き、周囲のメンバーと共有しながら実行していきます。

デザイン戦略ロードマップ

これを見ると、まだまだやるべきことができていないなと反省しますが、一方でワクワクするような未来が待っていると希望を感じ、日々CDOという仕事と向き合っています。

まとめ

ということで、CDOの仕事について振り返ってみました。最初に述べたように会社によってCDOの役割はさまざまです。ここに書いてあることはサンプルのひとつに過ぎませんが何かの参考になればと思います。ぜひ他のデザイン責任者の皆さんともつながれたら嬉しいです!DMください:@sergio_ny

最後に、CDOをやっていて一番嬉しいときは?と聞かれたらこう答えます。

デザイナーが生き生きと活躍しているとき

やっぱりデザイン組織の取りまとめ役として、個々のデザイナーがそれぞれの力を発揮し活躍している姿を見ることが一番の喜びです。そのためには経営レベルからデザインを文化として根付かせ、デザイナーが活躍できる環境をつくる、それが自分のやりがいにもつながっています。

追記(2023/12/25)

本記事の続編を書いています。併せてご覧ください。

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