デュルケム理論の現代的射程に関する一考察
はじめに 1870年、普仏戦争で皇帝ナポレオン3世が敗北し、第二帝政が崩壊して第三共和政が成立した。第三共和政下では新秩序を構築するための実証的な探究活動が活発化し、思想家たちは形而上学的な観念に依拠したフランス革命期の思想を批判するのと同時に、事実の観察に基づく「社会科学」を確立しようとした。このような文脈で、デュルケム(Émile Durkheim, 1858-1917)は「社会学」を自立した学問として確立した。本稿では、デュルケムが用いた「集合的沸騰」の概念に注目し、デ